怒れるエルドアン、その真の標的は──根幹にある「アメリカ不信」
Turkey’s Real Problem
圧力も懐柔も効果なし?
米バイデン政権は、トルコが空軍維持のために欲しがっているF16戦闘機を売却することで、トルコを軟化させようと考えている節がある。しかしF16の売却には米議会の一部が猛反対しているだけでなく、実現したところでアメリカとトルコの関係が崩壊を免れる程度の効果しか期待できないだろう。F16の購入が許されたとしても、トルコがかつてロシア製のS400地対空ミサイルシステムを購入したことを理由に、次世代型戦闘機F35の共同開発計画から締め出されたことの埋め合わせにはならないからだ。
バイデン政権は5月に実施されるトルコ大統領選の後に、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟に向けてトルコに圧力をかけるか、あるいは懐柔できると考えているかもしれない。
その背景にあるのはおそらく、エルドアンが再選を果たせば選挙のために国内でアメリカに対する強硬姿勢を維持する必要がなくなるから、こちらの言うことを聞くだろうという期待。あるいはエルドアンが敗れた場合、新大統領が関係改善のためにアメリカの言いなりになるという期待だろう。
だが、この考え方はあまりに楽観的だ。安全保障上の最大の脅威であるPKKとその関連組織を無力化させようというトルコの決意を、過小評価してはならない。現在のトルコの姿勢が、長期的な戦略的利益(選挙とは関係のない超党派の見方だ)を反映していることを認めないのも誤りだ。大統領選の結果によってトルコが考えを変えることはないだろう。
トルコは今後も、スウェーデンが自分たちの懸念に対処しない限り、そしてスウェーデン国内のクルド人寄りの左派や反イスラムの右派活動家がトルコに対して言い訳の種を提供し続ける限り、スウェーデンのNATO加盟を拒否し続けるだろう。
スウェーデンがNATOに加盟するには、アメリカがシリアのクルド人民兵組織に資金や武器の提供をやめる必要がある。
米政府はやがて決断せざるを得ない。PKKとつながりのあるシリアのクルド人自治区の存続と、スウェーデンを加盟国に加えてNATOを強化するのと、どちらをより重視するかだ。NATOの団結と強さを危険にさらしている原因は、アメリカがトルコの正当な安全保障上の利益のために動くのを拒否していることだと、バイデン政権は認めるべきだ。
一方のトルコ政府も、アメリカが戦略上の脅威に直面していることを認識し、その対処を手助けする覚悟を決める必要がある。米政府がPYDとYPGへの支持を考え直すためには、トルコがアメリカと協力してイランの脅威に対抗する意思を表明すべきだ。