怒れるエルドアン、その真の標的は──根幹にある「アメリカ不信」
Turkey’s Real Problem
スウェーデンの首都ストックホルムで行われた抗議デモでは、参加者がトルコのエルドアン大統領の写真を踏み付ける場面も(1月21日) CHRISTINE OLSSONーTT NEWS AGENCYーREUTERS
<NATO加盟申請のスウェーデンと関係悪化、だが本当の狙いはアメリカのクルド支援にある>
大統領はほえていた。1月23日、トルコ大統領のレジェップ・タイップ・エルドアンはスウェーデンを強い口調で非難した。
エルドアンに言わせれば、NATO加盟を希望しているスウェーデンは、加盟国であるトルコからのいかなる支援も期待すべきではない。なぜならスウェーデンは「イスラム教とトルコ人の信仰に敬意を払う」ことを怠り、イスラム教の聖典コーランを燃やす行為を許し、「テロ組織が好き放題に動く」ことを認めているからだ。
これに先立つ21日には、トルコのフルシ・アカル国防相がスウェーデン国防相との会談を中止した。アカルはスウェーデンで起きた「醜い活動」をその理由に挙げていた。
「醜い活動」とは、1月に入ってスウェーデンで起きたいくつかの出来事のことだ。11日には首都ストックホルムで、左派の活動家がエルドアンの人形を逆さづりにする抗議活動を行った。
21日にはある極右活動家が警察の許可を取った上で、トルコ大使館付近で抗議活動を行い、コーランを燃やした。同じ日に左派活動家のグループは、反トルコの抗議活動を実施。トルコの非合法武装組織「クルド労働者党(PKK)」の旗を掲げ、スウェーデンのNATO加盟反対を訴えた。デモ参加者はPKKの旗を掲げ、「われわれは、皆PKKだ」と書かれた横断幕を掲げた。
EUやアメリカ、スウェーデンは、PKKをテロ組織として認定している。だがスウェーデンはPKKの活動家を支援し、大物政治家たちもその立場を支持してきた。ペーター・フルトクビスト前国防相は2011年、PKKの「創設祝い」に参加した。
それでもスウェーデンはNATO加盟を目指す上で、PKKとのつながりを断つことと、国内でのPKKの活動を禁止するよう法改正を行うことを約束していた。保守派の新政権はトルコの信頼を得るために、シリアのクルド人民兵組織「クルド人民防衛隊(YPG)」と、その政治組織「クルド民主統一党(PYD)」と距離を置くと表明した。
ウルフ・クリスターソン首相はエルドアンの人形逆さづりの抗議活動について、スウェーデンのNATO加盟を「妨害する行為」だと非難。コーランを燃やしたのも違法ではないが、「極めて無礼」だと批判した。
根幹にあるアメリカ不信
だがエルドアンは声明の中で、スウェーデンで反トルコ・反イスラム感情が収まらない限り、トルコ政府は議会に対してスウェーデンのNATO加盟の批准を要請することはないと述べた。