教員不足で懸念される公教育の「質の低下」
学校によっては教育活動が機能しなくなるレベルの教員不足が起きている recep-bg/iStock.
<教員の過重労働がすっかり認知されていることもあってか、採用試験の受験者数は年々減少している>
東京都は、教員採用試験の筆記試験を大学3年生でも受験可能にするという。4年の夏に集中していた負担を分散しようという趣旨だ。こうした例は珍しいが、試験の実施時期を早くする、試験を年2回(夏・秋)実施するなど、教員採用試験の改革が各地で行われている。試験を受けやすくし、教員志望者を少しでも増やすのが狙いだ。
若者の絶対数が減っていることに加え、教員の過重労働も知れ渡ってか、教員採用試験の受験者は年々減少している。「子どもも減っているのだから、問題ないではないか」と言われることもあるが、そうした楽観を許さぬほど事態は深刻だ。学級担任がいないなど、学校の教育活動が機能しなくなる「教員不足」が起きている。
公立学校の教員は自治体ごとに採用されるが、東京都の教員採用試験の受験者数の推移をたどってみると<図1>のようになる。
受験者数は2013年度の採用試験(試験は前年夏実施、以下同じ)では1万7326人だったが、5年後の2018年度では1万3335人になり、さらに5年後の2023年度では7911人となっている。この10年間で半減だ。民間の就職機会が多いこともあってか、東京では教員志望者の減少が著しい。冒頭で記したような改革も必要なわけだ。
一方、名簿登載者数(合格者数)は横ばいで、近年は微増の傾向にある。受験者数と合格者数の折れ線はどんどん接近し、試験の難易度は下がってきている。2023年度の受験者は7911人、名簿登載者は3841人。合格率は49%、2人に1人が受かる状況だ。小学校に限ると合格率は7割にもなる。