教員不足で懸念される公教育の「質の低下」
こうなると、新規採用教員の質の懸念も持たれる。文科省の委託調査によると、小学校の20代教員の26%が「出身大学の入学難易度は高くない」と答えたそうだが、さもありなんだ(朝日新聞、2022年11月28日)。
日本の教員養成は「開放制」の原則に立っていて、教員養成大学以外の一般大学(私立大学)でも教員免許状を取得できる。この一般大学出身者が新規採用教員の中でどれほどの割合を占めるかは、<図2>を見ると分かる。
90年代までは、新規採用教員の半分以上を国立教員養成大学出身者が占めていたが、近年では一般大学(私立大)出身者が6割を占めている。採用試験の難易度低下により、合格者の裾野が広がっていることが見て取れる。
新たに教員となる者の学力の幅は広がっていることだろう。学力が同世代の中央値にも満たない者が教壇に立っているかもしれない。今の学校には、以前では入っていなかったような層が入職するようになっている。
教員志望者を闇雲に増やすことだけでなく、優秀な若者を呼び寄せることも考えなければならない。まず求められるのは教員の働き方改革だが、教員になるための経済的障壁を除くのも手だ。国立の教員養成大学の学費を下げる、ないしは教員志望者向けの給付奨学金を創設するのはどうか(戦前の師範学校は学費が無償で、生活費も支給されていた)。優秀であっても、経済的理由で教職への道を断念する若者もいるだろう。