かつて強盗犯だった男が軍事会社設立しプーチンに接近 ワグネル創設者は英雄か手駒か
民間軍事会社「ワグネル」を率いるエフゲニー・プリゴジン氏(左)とプーチン大統領 REUTERS
旧ソ連邦時代の末期、エフゲニー・プリゴジン氏(61)は盗みの罪で惨めな獄中生活を強いられていた。それが今や、ロシアで最も強力な傭兵集団の創設者として、ウクライナにおける戦果をアピールしてプーチン大統領からより大きな「寵愛」を得ようと一層の接近を図っている。
プリゴジン氏が率いる民間軍事会社「ワグネル」の部隊は、激戦が続くウクライナ東部ドネツク州バフムト北東郊外のソレダルを制圧したと表明。この軍事的成功を積極的に利用しようというのが、同氏の目論見だ。
プリゴジン氏によると、ソレダルを巡る戦闘はワグネルが単独で行った。だが、ロシア国防省は当初、正規軍が活躍したと主張。国防省側は13日、ソレダル制圧を正式に発表するとともに、勝利には正規軍の空挺部隊とミサイル部隊、砲兵部隊が貢献したと説明した。
これについてプリゴジン氏は、政府はワグネルに正当な称賛を送っていないと非難。「彼らは常に、ワグネルから勝利を盗もうとたくらみ、ワグネルの評価をおとしめるためだけに名前も知らない別の集団の存在を話題にしている」と憤った。
国防省はその後、状況をより「明確にする」として新たな声明を公表。ソレダル突入部隊の一角に「勇敢で自己犠牲的な」ワグネルの戦闘員が含まれていたと述べた。
このように存在感を増すプリゴジン氏は、いつかロシア国防相になってもおかしくないと、何人かの評論家は予想する。もっともプーチン氏が側近グループを互いにけん制させて「分割して支配する」政治手法を用いる傾向にある以上、プリゴジン氏が果たしてどの程度、プーチン氏への影響力を持っているのか、実際のところは良く分からない。
新しい英雄
プーチン氏の有力な支持者(そのうち何人かは同氏との直接的なパイプを持つ)は、さえない結果しか残せていない正規軍と比べ、プリゴジン氏が見事な成果を上げていると指摘する。
プリゴジン氏を「新しい英雄」をほめそやす元ロシア大統領顧問のセルゲイ・マルコフ氏は「プリゴジン氏にも欠点はあるが、私はそれらを口にしたくない。なぜならプリゴジン氏とワグネルは現在、ロシアの国家的な宝だからだ。彼らは勝利の象徴になっている」と自身のブログに記し、政府がワグネルにもっと資源を回すべきだと提言した。
政府系メディアRT編集長で大統領側近でもあるマルガリータ・シモニャン氏も、ソレダル制圧に関してプリゴジン氏に感謝の意を表した。
大統領府のスピーチライターだったアッバス・ガリアモフ氏は自身のブログで、プリゴジン氏はプーチン氏がショイグ国防相を更迭する事態をにらんで行動しているとの見方を示した。
プーチン氏はこれまでワグネルに関して、国家を代表していないが、ロシアの法令にも違反しておらず、世界のどこにおいても活動し、ビジネス上の利益を増進させる権利があるとの見解を明らかにしている。