かつて強盗犯だった男が軍事会社設立しプーチンに接近 ワグネル創設者は英雄か手駒か
ただ、ウクライナ戦争に対するロシア側の世論形成に関与してきた軍事ブロガーの1人はプリゴジン氏について、法の枠外での活動を認められた古代ローマ帝国の「百人隊」の指揮官になぞらえた。
その上で、ワグネルがさらに何度か成功を収め、今はオンライン投票レベルに過ぎないプリゴジン氏の国防相就任という話がこの先、現実味を帯びてくると述べた。
一方で、プリゴジン氏はワグネルの戦闘員の命など何とも思っていない、と元連邦保安局(FSS)幹部は批判する。この幹部の話では、ソレダルとバフムト周辺の確保に軍事的な重要性がないという。
政治分析を手がけるR・ポリティクの創設者、タチアナ・スタノバヤ氏は「要するにプリゴジン氏は、当局との関係の密接さに大きく左右される民間ビジネスマンであり、これは非常に脆弱な立場と言える」と話した。
プーチン氏の対策
ロシア政府は、プリゴジン氏が刑務所で何千人もの囚人をワグネルの戦闘員として徴募するのを許可している。複数の米政府当局者によると、その数は約5万人に上る。また、ワグネルは戦車や軍用機、ミサイル防衛網の装備も認められている。
正規軍との関係で言えば、プリゴジン氏は時折、軍上層部を無礼な言動で批判してきたが、何人かの西側の軍事専門家の見立てでは、こうした表面上のあつれきにもかかわらず、裏ではワグネルと正規軍は緊密に結びついていると考えられるという。
もっとも西側軍事専門家の間では、ウクライナ戦争の指揮官として軍の最上級幹部が指名されたのは、プリゴジン氏の影響力を抑える狙いがあったとの見方も出ている。
経営破綻したロシア大手石油会社・ユーコスの重役だったレオニド・ネブズリン氏は、実際のところワグネルが政府の統制から外れるリスクはあると警告する。
ロシア当局と近いある人物は、大統領府はプリゴジン氏を「使える手駒」とみなしつつも、そうした軍事組織の指導者に対しては暴走させないための「安全措置」をきちんと講じていると述べた。
(Andrew Osborn記者)