【総まくり】欧米からウクライナへ 供与候補の装甲車と戦車
What U.S. and Western Vehicles Could Be Headed to Ukraine?
米軍のストライカー装甲車。8つの車輪で18のバリエーションがある(2017年6月、NATOの演習で) Ints Kalnins-REUTERS
<ウクライナのゼレンスキー大統領は一貫して欧米に戦車の供与を求めているが、欧米各国は装甲車から供与する予定。装甲車はいわば装甲付きの自動車で、戦車と比べて火力、防護力、機動力共に劣る戦闘用車両。兵員輸送、偵察、指揮などにも使われる。装甲車と戦車の間の軽戦車もある>
1月10日、米政府がウクライナの前線にストライカー装甲車を送るべきかどうかを検討していることが報じられた。
政治ニュースサイト、ポリティコによると、今後数日で、米軍のウクライナに対する新たな支援の内容が明らかになる可能性があるが、国防総省の報道官は同サイトに、「現時点では発表することはない」と述べたという。
その直前には、フランス政府がウクライナに装輪装甲車「AMX─10RC」を送ることが発表された。仏政府当局者は、「ウクライナ軍を支援するために西側の装甲車が提供されるのは初めてだ」と語った。
以下に欧米諸国が供与を検討している戦車を紹介しよう。
【動画】対ウクライナ供与を待つ欧米の装甲車・戦車
【動画】ゼレンスキーがいちばん欲しい最強戦車(独レオパルト、米エイブラムス)
■ストライカー装甲車(アメリカ)
アメリカのストライカー装甲車は8輪装甲戦闘車の一種で、シャシーが共通する18種類のバリエーションがある。
米陸軍調達支援センターによると、ジェネラル・ダイナミックス・ランドシステムズ(GDLS)が製造するこの装甲車は、「2002年に配備を開始して以来、防御力と戦闘能力が大幅に強化され、信頼性が高く、戦闘に耐えうるプラットフォームを戦闘員に提供する」よう設計されている。
乗員数は9人で、行動範囲約500キロ、最高速度は時速100キロに達する。
国防総省のある職員は、50口径機関銃やMK19グレネードランチャーを装備できるストライカー装甲車も「戦車戦ではブラッドレー戦闘車に及ばない」が、兵士を保護することはできるし、戦場における「接近戦」は可能だとポリティコ誌に語った。
ドイツ政府は躊躇
■ブラッドレー戦闘車(アメリカ)
米国防総省は、ブラッドレー戦闘車(追跡型中装甲車)約50両をウクライナ軍に供与する予定であることを確認した。
製造元のBAEシステムズ社によると、この戦闘車は25ミリ砲を搭載し、「アメリカ陸軍の装甲旅団戦闘チームの重要な一角」であるという。
ホワイトハウスの元国防予算アナリスト、マーク・カンシアンは昨年12月、ブラッドレー戦車は「戦闘車ではあるが、事実上、軽戦車なので地上戦能力を大きく向上させるだろう」とブルームバーグに語った。
■レオパルト2戦車(ドイツ)
ドイツでは、ウクライナ軍にレオパルト2戦車を提供するよう求める声があがっているが、オラフ・ショルツ首相はこれに反対している。政府報道官はメディアに対し、戦車を送る計画はないと述べた。
フォーブス誌によれば、この戦車は「速度、装甲、火力の絶妙なバランス」を持ち、「少なくとも現代戦車の金字塔であるアメリカのM-1エイブラムス主力戦車に並ぶ存在と広く考えられている」。
ドイツは代わりに、今後3カ月でマルダー歩兵戦闘車40両をウクライナに送ると発表している。
■AMX-10RC装甲車(フランス)
AMX-10RC装甲車は「軽戦車」とも呼ばれ、ウクライナのキエフ・ポストが指摘するように、主力級の戦闘用戦車には及ばない。
だがフランス軍が長年、重用している戦車であり、国際戦略研究所の欧州担当上級顧問フランソワ・エズブールは、「装甲偵察車として、ウクライナの領土奪還を支援することになる」と、ポリティコ誌に述べている。