最新記事

東南アジア

インドネシア、収賄容疑で知事逮捕に支持者ら暴徒化 催涙弾で応じる警察と市街戦

2023年1月11日(水)18時45分
大塚智彦
暴徒化した州知事支持者たちと応戦する警察官たち

投石する州知事支持者たちに警察は催涙弾の水平発射し、市街戦のような状況に…… KOMPASTV / YouTube

<自らが支持する政治家を盲信するのはアジアでも──>

インドネシアの汚職撲滅委員会(KPK)は1月10日、同国東部ニューギニア島にあるパプア州のルーカス・エネンベ知事を収賄容疑で逮捕し、取り調べのために首都ジャカルタに移送した。

KPKによると総額で少なくとも約10億ルピア(6万440ドル)をインフラ開発などに絡む賄賂として受け取り、その多くを海外のカジノで散財していたという。

支持者が警察と衝突、市街戦のような状況に

インドネシア各メディアの報道によると、ルーカス知事は10日に州都ジャヤプラ市内のレストランで食事中に複数のKPK職員によって逮捕され、地元の機動警察本部に連行された。

ルーカス知事逮捕の情報が市内などに伝わると知事の支持者らが機動警察本部前に押し寄せて抗議運動を繰り広げた。

支持者らは警察本部と警戒に当たる警察官に投石をはじめ、警察側は催涙ガス弾で鎮圧に乗り出し、19人が逮捕されたが支持者らの抗議運動は解散に追い込まれたという。またセンタニ空港付近でも支持者と警官隊の衝突があり、警察側が発砲して支持者1人が死亡したと情報もある。

その後ルーカス知事は取り調べのためにセンタニ空港から空路ジャカルタに移送され、中央ジャカルタのガットト・スブロト陸軍中央病院で神経内科と心臓病科の診察を受けた。KPKによると診察の結果ルーカス知事の健康状態に特段の異常は認められなかったという。

ルーカス知事の汚職体質は以前から指摘されていたが、熱狂的な支持者の反発を恐れてKPKは慎重に捜査を進め、2022年9月に収賄容疑者として指名していた。

しかしルーカス知事は健康状態を理由に召喚に応じず捜査の手から逃れるなどしていたが、KPKは知事の健康状態にはなんら異常は認められないとして今回逮捕に踏み切った。

公共事業に絡み多額の収賄

KPKによると直接の逮捕容疑は2022年9月にパプア州東部でのインフラ開発プロジェクトに関連して民間団体から10億ルピアの賄賂を受け取ったこととしている。

2013年に就任したルーカス州知事に関しては以前から収賄の噂があり、KPKは早くから目をつけていたという。就任以来の収賄額は累計で5600億ルピア(約4億7700万円)にも上るとの試算もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米政権、ハーバード大への助成・契約90億ド

ワールド

アルゼンチン貧困率、24年下半期は38.1%に急低

ワールド

豪中銀、政策金利据え置き 米関税の影響懸念

ワールド

イスラエル首相、「カタールゲート」巡る側近の汚職疑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中