補助スタッフの数は少なくないのに、日本の教員の勤務時間が減らない理由
日本の教員の業務は膨大でその内容も多岐にわたる NuxPenDekDee/iStock.
<まず膨大な量の業務を削減しなければ、補助スタッフの数を増やしても事態は変わらない>
日本の教員の過重労働を緩和するため、様々な施策が実施されている。最近の政策文書でよく見かけるのは「補助スタッフの増加」だ。教員の業務があまりに多いので、教員免許を持つ教員が行う必要がない業務、専門性を要さない雑務を分担してもらうスタッフを増やそう、というものだ。
法律の上でも2017年に学校教育法施行規則が改正され、部活動指導員というスタッフが制度化された。教員に代わり、単独で実技の指導や大会等の引率を行うことができる。また2021年の同規則改正により、教員業務支援員も新設された。読んで字のごとく教員の業務を支援するスタッフで、プリントの印刷・配布準備や採点補助等を行う。
こういう政策もあり、学校に配置される補助スタッフも増えてきている。やや古いが、2018年の国際教員調査「TALIS 2018」によると、日本の中学校の補助スタッフ(personnel for pedagogical support)1人あたりの教員数は10.3人。これを裏返すと、教員100人あたりの補助スタッフは9.7人。上記調査に参加した47カ国の平均値(10.4人)よりもわずかに少ない程度だ。この数値が高い順に、参加国・地域を並べると<表1>のようになる。
日本はちょうど真ん中辺りだ。教員の勤務時間がべらぼうに長い日本では、業務を分担する補助スタッフが少ないかというと、そうでもない。
補助スタッフの数が上位の国には、教員の勤務時間が短い北欧の諸国が位置している。スウェーデンの中学校教員の平均勤務時間(週)は42.3時間で、日本の56.0時間よりだいぶ短い。それならば、補助スタッフが少ない国では教員の勤務時間が長いかというと、そのようなことはない。イタリアでは教員100人あたり2.8人しか補助スタッフがいないが、教員の週の平均勤務時間は30.0時間で、日本はおろかスウェーデンよりもはるかに短い。