最新記事

ウクライナ戦争

「ロシアがウクライナの越境ドローン攻撃を防げない理由」

Kremlin Can't Stop Ukraine's Mounting Strikes Deep in Russia: Ex-Commander

2022年12月27日(火)20時15分
ニック・モードワネック
ロシア・エンゲリス空軍基地

ウクライナ軍のドローン攻撃を受けたロシア南西部のエンゲリス空軍基地(同基地からTU95爆撃機が飛び立つ様子、2008年撮影) Sergei Karpukhin-REUTERS

<12月26日にウクライナ軍がロシアの空軍基地を攻撃したが、ロシア軍元司令官のイーゴリ・ギルキンはロシアの防空態勢には欠陥があると指摘>

2014年のロシアによるクリミア併合で中心的な役割を果たしたロシア軍の元司令官イーゴリ・ギルキンは、12月26日、ウクライナによるロシア国内への攻撃増加は止められないと述べた。

ギルキン――別名イーゴリ・ストレルコフでも知られる――はテレグラムへの投稿の中で、旧ソ連のシステムは、敵の無人航空機(UAV)や高機動ロケット砲システム(HIMARS)の「大々的な使用」に対処できる態勢にないと説明。

NATOによるウクライナへの軍事支援強化も、ロシアの戦略施設への「いっそう頻繁な」攻撃につながるだろうと、ギルキンは書く。

「現在の戦争が始まるまで、わが軍の防空は『先の植民地戦争への備え』を整えていた」

「それに対して、敵は今や、わが国の領土の奥深くで『安価で快適な』手段により戦略的目標を攻撃する能力を備えている。使い捨てのカミカゼ攻撃機を費やしているが、わが軍の防空態勢には、それに対抗する能力がまったく、もしくは部分的にしか備わっていない」

ギルキンの警告が投稿される前には、ロシア南西部のエンゲリス空軍基地を狙ったウクライナ軍のドローンを、現地時間12月26日午前1時35分に撃墜したとロシア国防省が報告していた。この基地は、最寄りのウクライナ支配地域から560キロ以上離れた場所に位置する。

ドローンは撃墜されたものの、その残骸によりロシア兵3人が死亡した。

ウクライナ空軍司令部のユーリー・イグナト報道官はウクライナメディア「ガゼッタ」に、「ロシアがわが国の領土にしていることの結果がこれだ」と語った。

「この戦争が自国の領土の奥深くにまで及ぶことはないとロシア人が考えているとしたら、それは間違っている」

ロシア政府の対ウクライナ軍事戦略を「愚かな頑固さ」と形容したこともあるイグナトは12月26日、ウクライナ側の行動というよりは、長期に及びそうな戦争の最中に自軍を強化するロシアの能力のほうを懸念していると述べた。

「ウクライナの軍事設計機関や軍産複合体企業が、確実性の高いまったく新しい防空システムを『ワルツを踊るペースで』開発し、製造を開始できるなどと考えるべきではない」と、イグナトは言う。「そんな馬鹿げた話はない」

「一方でロシアの軍事・政治指導者たちも、圧倒的な軍事力により『自陣で』敵を壊滅させる能力や態勢を示していない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、ウクライナとの二国間協議提案 停戦延長

ワールド

米ホワイトハウス、新国防長官探し開始との報道を否定

ビジネス

米国株式市場・午後=ダウ一時1300ドル安、トラン

ワールド

インド、米国と通商巡り「大きな進展」 米副大統領が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボランティアが、職員たちにもたらした「学び」
  • 2
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投稿した写真が「嫌な予感しかしない」と話題
  • 3
    遺物「青いコーラン」から未解明の文字を発見...ページを隠す「金箔の装飾」の意外な意味とは?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 6
    「アメリカ湾」の次は...中国が激怒、Googleの「西フ…
  • 7
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 8
    なぜ? ケイティ・ペリーらの宇宙旅行に「でっち上…
  • 9
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 10
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 8
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中