中国が建設するインドネシア高速鉄道で脱線事故 事故車両にカバーかけ証拠隠滅?
さらにインドネシア政府は高速鉄道の終点でもあるバンドンから北部沿岸部を走る在来線(高速化に日本が協力)について、日本に対して「バンドンからさらに延伸して北部沿岸の在来線と結ぶ計画への参入」を示唆。日本は技術的に困難(狭軌と広軌の違い、中国建設区間とでは安全基準が異なる)であるとの理由で拒絶する姿勢をみせている。
日本側には「何をいまさら」との思いがあることにインドネシア側は思い至らないのだろうとの見方が有力だ。
事故原因捜査で証拠隠滅への懸念
12月19日、インドネシア警察は死傷した中国人労働者の全員の身元を明らかにするとともにすでに18人の事故目撃者を確保しており、目撃証言なども参考にして事故原因の調査に着手したことを発表した。
インドネシア運輸省は国家運輸安全委員会とも協力して「なぜ線路が完成していない区間に作業車両が進入する事態になったのかを中心に事故原因の究明にあたる」としたうえで当面の間全ての工事の中止をKCICに求めた。
警察は場合によってはKCICなどの関係者を呼んで直接事情聴取をする必要性も出てくるとして、事故原因調査には一定の時間がかかるとの見方を示している。
公開された脱線転覆事故の現場では事故車両にカバーをかける作業が行われており、中国人労働者による事故だけに「証拠隠滅」の可能性も指摘されている。
中国は2011年7月に浙江省温州市で起きた高速鉄道の高架上での追突脱線事故で高架下に落下した車両を事故後24時間が経過する前に穴に埋めてしまい「事故原因の調査が始まる前に証拠隠滅を図った」と批判されたことがある。
さらに2019年12月には広東省広州市の地下鉄建設工事現場で道路が突如陥没、通行車両2台が落下した。計3人が車両と共に埋まってしまったが、安否確認も行わずに当局はコンクリートを流し込んで陥没を塞いでしまった。これも「事故原因の隠蔽」とされた。
こうした「実例」が過去にあるだけに、中国側による今回の高速鉄道事故の「隠蔽工作」への懸念が出ているのだ。
この高速鉄道計画は中国の習近平国家主席が進める「一帯一路」構想の一環とされ、インドネシア政府は中国の思惑に乗せられた形となっているが、一連の問題続出によって「中国への受注を最終的に決断」したジョコ・ウィドド大統領への風当たりが強くなっている。