韓国「国防白書」、北朝鮮を6年ぶりに「敵」と表記、現地の反応は?
尹(ユン)政権は国防白書で北朝鮮を「敵」とみなす表記を6年ぶりに復活させた...... REUTERS/Daewoung Kim
<北朝鮮のミサイル発射回数は今年が最多、韓国「国防白書」は、6年ぶりに北朝鮮を「敵」と表記したが......>
新型コロナウイルス感染症の拡大以降、筆者をはじめ在韓日本大使館に登録している日本人は連日のように注意喚起メールを受け取るが、このところ「北朝鮮によるミサイル発射」が増えている。
韓国の政府系シンクタンク・統一研究院が、北朝鮮のミサイル発射回数は今年が最多と指摘し、米ジェームズ・マーティン不拡散研究センターも北朝鮮が発射したミサイルは正式な統計がある1984年以降、今年が最多と分析した。
米国と韓国は北朝鮮が海外に派遣したIT技術者が核やミサイル開発資金を稼いでいるとみて、関係各国に注意を促すことで合意した。
北朝鮮のミサイル発射は今年が最多
韓国統一研究院の北朝鮮専門家は12月8日に行なった月例会で、1984年以降、確認された北朝鮮のミサイル発射と核実験は183回で今年が最多と指摘した。金日成時代は8回、金正日時代は28回だったが、金正恩政権になってから147回と全体の8割を占めており、今年は39回に上っている。6回におよぶ核実験も3回が今年の秋だった。
米ジェームズ・マーティン不拡散研究センター(CNS)は、核脅威イニシアティブ(NTI)の依頼を受けて北朝鮮が発射した弾道ミサイルを分析した結果を12月2日に公開した。
CNS によると1984年以降、北朝鮮が発射したミサイルは222発で、28%にあたる62発が今年1月から11月だった。大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17型」や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、新型戦術短距離弾道ミサイル(CRBM)など各種ミサイルを発射したが、CNSは62発のうち37発は北朝鮮が諸元を公開しておらず、正確な種類は確認できないと明らかにした。
12月5日、韓国軍と在韓米軍が国境地帯の江原道鉄原で多連装ロケットシステム(MLRA)などの発射訓練を開始すると、北朝鮮は東西の海上に向けて130発余りの砲弾射撃を行い、翌6日にも10余発の砲撃を行なった。北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部報道官は朝鮮中央通信を通じて82発の砲弾を射撃したと発表した。
北朝鮮のIT人材を雇用しないよう呼びかけ
国連制裁が続く北朝鮮の国民は深刻な飢餓に苦しんでいるとみられている。北朝鮮は核やミサイルの開発資金を稼ぐため、ロシア兵の軍服を製造している可能性が指摘されている。事実なら国連常任理事国のロシアが国連安全保障理事会の制裁決議に違反していることになる。
また米韓両政府は北朝鮮がIT技術者を国外に派遣して外貨を稼いでいるとみる。軍需工業部や国防省などに所属するIT技術者が稼いだ外貨が所属機関に上納されて核開発やミサイル開発に使われているとみて対応を協議した。
韓国外交部、国家情報院、科学技術情報通信部、統一部、雇用労働部、警察庁、公正取引委員会は共同で、韓国企業に対し、国籍と身分を偽装した北朝鮮のIT人材を雇用しないよう注意を呼びかけ、身元確認の強化を要請した。