ロシアの戦争は今や「防衛戦」に...ウクライナ軍を恐れて設置した「竜の歯」とは?
ウクライナのへルソン州の道路を走るウクライナの車両(11月18日) Viacheslav Ratynskyi-Reuters
<ウクライナの支配地域を次々と失っているロシアは、自国の防衛のために「竜の歯」と呼ばれる構造物を設置し始めた>
ウクライナ軍の反抗を受けて苦戦するロシアが、ウクライナとの国境地帯に「竜の歯」と呼ばれる障害物を設置して防御態勢を整えている。これは戦車などの移動を妨害するもので、「戦車用トラップ」とも呼ばれるコンクリート製のピラミッド型の構造物だ。
■【写真】ロシア側がパニックに陥っている証拠? 国境に設置された「竜の歯」
ウクライナのニュースサイト「プラウダ」は12月7日、ロシアがウクライナとの国境に近い東部クルスク州に、「竜の歯」を設置したと報じた。
「竜の歯(元はドイツ語のDrachenzähne)」は、第二次大戦中に戦車や機械化歩兵の移動を妨げる目的で初めて使用された。アラブ首長国連邦の英語メディア「ザ・ナショナル」によれば、第二次世界大戦以降、これまで戦闘で使用されたことはなかったという。
ロシア・クルスク州のロマン・スタロボイト知事は7日、メッセージアプリ「テレグラム」への投稿の中で、既に州内に設置されている「竜の歯」の視察を行った際の様子とみられる複数の写真を共有。「国境付近の防衛強化を続けている」と書き込んだ。
「竜の歯」がどれだけ効果を発揮するのかは不明だが、むしろウクライナ軍がやってくるまで形を保っていられるかを怪しむ指摘もある。検証可能な写真や動画を元にウクライナ軍とロシア軍の装備の損失を記録しているオランダの軍事ブログ「Oryx」は、「ロシアの防衛線の一環として設置された『竜の歯』は、ウクライナの戦車を狙う前に崩れつつある」としており、既に一部の構造物は劣化しているもようだ。
「ロシアの戦争は今や防御作戦に」
プラウダによれば、ウクライナの反抗を恐れるロシア側はパニックに陥っており、「竜の歯」を設置したり塹壕を掘ったりしているという。クルスク地方は、ウクライナ西部のスーミ州と国境を接している。ロシア軍は2月下旬の軍事侵攻開始後にスーミ州の一部を制圧したものの、その後同州から撤退。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は4月、スーミ州は完全に解放されたと宣言した。
ロイター通信は11月半ば、ロシア軍が幾つもの敗北を経験したことを受けて守りの態勢に入ったと報道。「ロシアのウクライナ侵攻は今や、防御作戦となった」という西側の匿名の当局者の発言を引用して伝えた。