英、移民などの入国者監視に「GPS足輪」 尊厳傷つけ無用との批判も
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GPS足輪で監視されるストレスに耐えきれず自殺を試みる者も…… BBC News / YouTube
英国の入国者収容所に2年間拘留されていたミミさんは、どうしても解放されたくて足首に電子タグを着けることに同意した。だが、自由を味わえたのはつかの間だった。
2カ月後、ミミさんは電子タグを通じて監視されるストレスに耐えきれず、自殺未遂を犯した。
「このタグを見られたくないから、何もできない。恐ろしい」──。そしてある日、ストレスが限界を超えた。
40代のミミさんは、両親が第2次世界大戦後にカリブ諸島から英国に移住したと信じているが、自らの国籍を証明できず、公式には無国籍状態。現在、英国に亡命を申請中で、決定が下されるのは約10年後だという。
「自分の出自については何も知らない。ひどく小さい頃、性的搾取と近代版奴隷制の中で棄てられた」と、トムソン・ロイター財団のビデオインタビューで語った。
英入国者収容所に拘留されている人々に無料で法的代理を提供している団体の「収容入国者保釈」の幹部、ルディー・シュルカインド氏は、電子タグを装着した人々は「信じられないほど尊厳を傷つけられ、らく印を押された気持ちになる」と説明。「街を歩くとタグを着けているのを見られ、危険な、あるいは暴力的な人間だと思われる。考えられないほどつらいことだ」と話した。
英政府は移民削減という長年の約束を果たすべく、在留資格を巡って拘留された人々への電子タグ装着を近年強化している。移民問題は、2016年の国民投票で欧州連合(EU)離脱派が勝利する決め手ともなった。
今年はウクライナ、アフガニスタン、香港から逃れてきた人々や留学生が急増し、移住者数は過去最高の50万4000人に達した。この数字には英仏海峡を小型ボートで渡ってくる人々は含まれていないが、そうした人々も急増している。
非人間的
戦争や貧困、自然災害などで母国を逃れる人は、世界中で記録的な数に達し、各国政府は国境管理強化に足首タグや生体認証データなどのデジタル技術を活用するようになっている。
英国では2016年、移民反対の声に押され、国外退去を命じられた外国籍の人全員についてタグ装着を義務化。人権団体は、非人間的でプライバシーの侵害だと批判している。