【現地報告】W杯カタールへの「人権侵害」批判は妥当なのか
ALL EYES ON QATAR
W杯が10年以上にわたり、カタールに雇用を生み出し続け、外国人労働者の仕送り先の家族を養ってきたことも事実だ。カタール人口の3分の1に相当する訪問客が大会を楽しむ陰で、彼らのような外国人の存在があったことを忘れてはならない。
一方、彼ら自身もこの祭典を楽しんでいるようだった。海岸沿いの幹線道路は歩行者天国に変わり、外国人労働者の家族連れでにぎわっていた。
建設労働者が集住する工業地帯にはFIFA(国際サッカー連盟)公式のファンゾーンが設置され、パブリックビューイングに多くの人が集まったとのことである。普段はクリケットに夢中な南アジア系の人たちも、この時ばかりはサッカーに声援を送った。もっとも、このファンゾーンは街中に大量の建設労働者が繰り出さないための「仕掛け」でもある。
地下鉄の車内で隣り合わせになったカタール人と話をする機会があった。
筆者がW杯開催についてどう思うかを尋ねると、とても誇りに思うし、素晴らしい機会であると述べたが、その一方で、一部の国の人がさまざまな問題を持ち込むことは嫌だとも話した。地元の人たちにとって、海外からの人権問題批判は一方的なものに映ったのかもしれない。
またスタジアムでのビール販売の禁止や性的少数者の権利をめぐる批判についても、自分たちの文化や宗教的価値観が尊重されていないと感じたことだろう。W杯をきっかけにカタールと国際社会が互いを非難し合い、建設的な対話を閉ざすことになったとすれば、残念なことである。
W杯の日程はこの後、カタールの国祭日に当たる12月18日に行われる決勝戦まで続く。
大会を終えた後はエネルギーなど一部の業界関係者を除き、世界中の多くの人はカタールのことも、批判を集めた人権問題も忘れてしまうかもしれない。
だが熱狂から覚めた後こそ、世界中に広がる同様の問題にも向き合いながら、冷静に論じなければならない。
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