生きているうちにこの言葉を聞くとは...中国・反政府デモで、天安門の悪夢が蘇る
The Crackdown Begins
政府に対する抗議や表現の自由の象徴として白い紙を掲げる抗議者たち(11月27日、北京) THOMAS PETERーREUTERS
<中国各地に突然広がった学生たちによる抗議活動。静観から暴力へ豹変した当局の混乱ぶりを目の前で見た若者が生々しく語る>
中国が騒乱に揺れている。その規模は過去数十年間で最大だ。11月最後の週末以降、国内各地の多くの都市で、憤る市民が政府の新型コロナ対策への抗議デモを繰り広げた。いくつかの地域、特に主要都市では、矛先は一党支配体制を敷く中国共産党にも向かっている。
「新型コロナ検査は要らない。自由が欲しい」「習近平(シー・チンピン)は退陣せよ」──。首都・北京や上海、成都、広州では、市民数百人が花やろうそく、言論統制への抵抗の象徴である白い紙を手にしてそう訴え、長らく抑え込まれてきた当局への不満を堂々と表明した。面食らった警察は対応をめぐって混乱状態だったが、今や可能な手段を総動員して、再発防止に躍起になっている。
一連のデモのきっかけは、11月24日に新疆ウイグル自治区の区都ウルムチの集合住宅で発生し、10人が死亡した火災だ。新疆では数カ月前から厳しい外出禁止措置が断続的に実施されており、ゼロコロナ政策のせいで救助が妨げられ、住人が逃げ遅れたのではないかとの臆測が広がった。
今回ほどの規模の抗議活動は中国では珍しい。習が国家主席に就任してからは特にそうだ。習政権の下では、治安が共産党の最優先事項に据えられ、反体制派は監視を受けるばかりか、投獄されることもしばしばだ。
上海では、11月26日夜に市内のウルムチ通り(新疆の区都にちなんだ名称だ)で開かれた火災犠牲者の追悼集会が、抗議デモに発展した。
「すごくシュールだった」。27日未明、集会に参加した同市在住のジュリアナ(27)はそう振り返る。「1カ月前に、上海で抗議活動が行われると聞いたら、そんなことはあり得ないと思っていたはずだ」
「本当に衝撃的だった」と、別の参加者のサブリナは語る。「生きているうちに『習近平は退陣せよ』という言葉を聞くとは考えもしなかった」
話を聞いたデモ参加者(当局の弾圧を避けるため、全員が匿名を希望)は、その場にいたのは若者が大半だったと証言する。激戦状態の就職戦線や受験競争のストレスにまみれている世代だ。
彼ら若年層の間では2年ほど前から、競争を離脱して最低限の生活でよしとする「躺平(タンピン)」や、頑張るより諦めるほうがましだという「擺爛(バイラン)」が合言葉になりつつある。その一方で、国外移住を目指す動きも加速している。
追悼集会から自然発生
上海のデモは自然発生的で、当初はとても平和的だったと、参加者らは言う。