「プーチンが冬を武器として利用」──NATOが批判する理由
厳しい冬を敵に回すか味方にするかが、戦況の大きなカギを握りそうだ/BAZ RATNER-REUTERS
<ロシアとウクライナに「冬将軍」がやって来る。過去数カ月はウクライナ軍が戦場で攻勢をかけ、東部の広大な土地をロシア軍から奪還してきたが、厳しい冬の到来により戦闘はペースダウンしそうだ>
歴史を振り返ると、いてつく冬は、たびたびロシアにとって強力な援軍になってきた。過去に「冬将軍」がナポレオンやヒトラーの部隊の進軍を阻んだことは、よく知られている。しかし、今回の戦争でロシア軍が対峙している相手は、この土地の冬を知り尽くしているウクライナ軍だ。
専門家の見方によると、今回の戦争で、冬の気候はロシアとウクライナの双方に、別々の理由で恩恵と試練の両方をもたらす可能性が高い。
兵站の面では、欧米の支援を受けてきたウクライナ軍のほうが厳しい冬に対処しやすいだろう。対するロシア軍は、この戦争が始まった頃から兵站の面で苦労してきた。
もっとも、ウクライナ軍もさらなる攻勢をかけることは難しくなるだろう。木の葉がなくなって隊列が丸見えになり、しかも地面がぬかるむことの影響で、道路上を進軍せざるを得なくなるためだ。
「冬の間は、一部の作戦が減速する可能性が高い。その間、双方ともあまり大きな動きは見せないかもしれない」と、米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は述べている。
ただし、冬の間にも状況は変化する。毎年2月頃にはひときわ厳しい冬が訪れて、地面が硬くなる。その結果、来年の早い時期には大規模な軍事作戦が可能になるかもしれない。「全般的にその状況を追い風にしやすいのは、ロシアよりウクライナだろう」と、アメリカン・エンタープライズ研究所のフレデリック・ケーガン上級研究員は言う。
一方、ロシア軍は防衛ラインを固める構えを見せ始めている。商業衛星の画像によると、ロシア側は各地に塹壕と対戦車防御施設の建設を進めている。「こうした動きにより、ウクライナ軍がロシア軍を攻めることは次第に難しくなるだろう」と、ランド研究所のダラ・マシコ上級政策研究員は指摘する。
長期の戦闘で激しいダメージを被っているロシアにとって、守りを固めて、冬を利用して時間を稼ぎ、その間に態勢を立て直そうとするのは、当然の戦略と言えるだろう。