「偉大な復興」の終わりと「歴史的凋落」の始まり──中国の次期首相候補、李強を待ち受ける現実
LI QIANG
上海でのゼロコロナ政策の進め方も軋轢を生んでいるかもしれない。李強は当初、経済の正常化を重視して緩やかな感染対策を取ったが、感染の急拡大を受けて一転して厳しい対策を取り(激怒した習の指示によるとされる)、上海市をロックダウン(都市封鎖)して市民の不評を買った。習との信頼関係は絶対ではなく摩擦も予想される。
習は10年前、共産党幹部の子弟で裕福かつ強い影響力を持つ「太子党」の同胞らの強い支持を受けて権力の座に就いた。しかし、それ以降は彼らの支持のほとんどを失った。ライバル派閥である江沢民派と李克強ら共産主義青年団(共青団)派を粛清して以降、習の権力独占は実は極めて頼りない。ゼロコロナ政策への抗議から始まった「白紙革命」で彼の評価は既に傷ついている。さらに弱くなれば、習体制は破綻しメンバーは外部との連携を探るだろう。
習は中国の平和的台頭を好んで口にするが、彼が権威を維持し、次期首相が世界をあっと言わせる手腕を発揮しなければ、偉大な中国の復興という習の「中国の夢」は凋落という現実に変わるだろう。その場合、李強は歴史的凋落の舵取りという重要な役割を担うことになるが。
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