【W杯】イラン国民が米国勝利を祝う皮肉、「体制の犬」にされた選手の悲劇
Videos Show Iranians Celebrating U.S. Win in World Cup
アメリカと全力で戦ったイランチームを待ち受けるものは Wolfgang Rattay-REUTERS
<W杯で宿敵アメリカに敗れたイラン。だがイラン国民は大喜び。それほど現政権への怒りは強く、現政権の「言いなり」の代表チームまでが憎悪の対象に>
サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会1次リーグの試合で29日、イランは国際政治上の宿敵アメリカに2敗目を喫し、1次リーグから姿を消した。だが信じられないことに、イランではこの敗北に歓声を上げる人々の動画がソーシャルメディアに投稿された。
アメリカとイランがサッカーで対戦するのは、1998年フランス大会以来24年ぶり。決勝トーナメントへの進出がかかる緊迫の試合で対決した。
アメリカはイランを1対0で下し、競技の勝利だけでなく、「ならず者国歌」に対する象徴的な勝利も手に入れた。会場には多くのイラン人が詰めかけ自国チームに声援を送ったが、すべてのイラン人がイランを応援していたわけではないことも明らかだった。
ソーシャルメディアには、イラン国民が自国チームの敗北を祝う動画であふれた。イランはここ数カ月、22歳のクルド系イラン人、マフサ・アミニの死に端を発した政治的混乱に直面している。アミニは今年9月、ヒジャブを適切に着用せず服装規定に違反したという理由で警察に逮捕され、拘留中に死亡した。この事件は全国的な抗議行動を引き起こし、治安当局の手で数百人の死者を出す結果となり、イランでは反政府デモが続いてきた。
花火で敗北を祝う
アミニの故郷であるイラン西部クルディスタン州サゲズでは、一部住民がイランの敗北を祝っていた。イランのジャーナリストで活動家のマシフ・アリネジャドは、歓声があがり、花火が打ち上げられる様子を撮影した動画をツイッターに投稿した。
「これが今夜のイラン。アメリカのサッカーチームがイラン・イスラム共和国のサッカーチームに対してゴールを決めた瞬間。ここは、政権のヒジャブ警察に惨殺され、ジェンダー・アパルトヘイト政権に対する革命を引き起こした22歳の女性アミニの故郷サゲズ」
この動画はツイッターで3万回以上再生された。
またイラン・インターナショナル・イングリッシュという団体は、イランの他の地域の同様の動画をツイートし、住民が歓声をあげ、花火を打ち上げ、車のクラクションを鳴らして祝う様子を紹介している。ある動画は、アミニの故郷と同じくクルド人住民が多いイラン西部の都市マリバンから投稿された。同団体はまた、首都テヘランからの動画も公開した。
イランの活動家がツイートした別の動画では、少なくとも数十台の車が停止し、運転手が車から降りて拍手をしてアメリカ・サッカーチームの勝利を応援している様子が映し出されていた。