代表不在でも、奇妙な存在感を放つ中国──スポーツ外交とパンダ外交の先には?
China AWOL at World Cup
ブラジル人選手3人に中国籍を取得させ代表チームに入れたり、代表チームの強化キャンプに合わせてプロリーグの中国サッカー・スーパーリーグ(CSL)の試合スケジュールを変更するほどの熱の入れようだった。
相次ぐクラブの経営破綻
だが今年2月に行われたアジア最終予選第8戦で中国はグループ最下位のベトナムに3対1で敗れ、カタール大会出場の夢はあえなく砕け散った。
中国がベトナムに負けたのはこれが初めて。18年のロシア大会予選時と比べ、この4年間で中国チームの実力が低下したのは明らかだ。
今回の代表チームにはCSLの選手は2人しか入っていなかった。ロシア大会のときは9人だったのに、なぜこれほど減ったのか。そこに中国サッカー界に吹きすさぶ厳しい逆風がうかがえる。
CSLからは既に外国人選手が多数去っている。この「大量脱出」は新型コロナウイルスのパンデミックが起きる前から始まっていた。16年以降「5年間くらいは巨額の資金が流入し、中国サッカー界はブームに沸き返っていた」と、中国のスポーツ事情に詳しいマーク・ドライヤーは言う。
「その後突然バブルがはじけ、下部リーグだけでなく、CSLのクラブも次々に経営破綻に陥った。これほど短期間に多数のクラブが破綻するなんて、ほかの国では考えられないことだ」
CSLの20年シーズンを制した江蘇FC(旧・江蘇蘇寧)は、オーナーの電子商取引大手、蘇寧控股集団の経営状況が悪化し、タイトル獲得からわずか数カ月後の21年2月末に活動を停止した。
天津天海(旧・天津権健)は親会社の製薬会社が違法なマーケティングを行ったとして、19年にクラブの会長を務める創業者が逮捕され、20年5月に解散を発表した。
新型コロナ以前から、中国のサッカー界では選手への給与支払いの遅れなど、資金難が報じられてきた。広州FC(旧・広州恒大)を運営する不動産開発大手、中国恒大集団が21年秋に経営危機に陥ったように、多くのクラブの親会社は金欠状態だ。