最新記事

カタールW杯

代表不在でも、奇妙な存在感を放つ中国──スポーツ外交とパンダ外交の先には?

China AWOL at World Cup

2022年11月28日(月)13時24分
ジョナサン・ホワイト
パンダ外交

W杯開幕に合わせて中国から送られたパンダ、ドーハ近郊の動物園(10月)HAMAD I MOHAMMEDーREUTERS

<2002年日韓共催大会を最後にW杯に出場していない中国。今大会で企業広告の数は世界トップレベルだが、なぜサッカー選手のレベルが上がらないのか?>

11月20日に開幕したサッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会。序盤からの大番狂わせが世界中のファンを驚かせているが、気になるのは中国の不在だ。

中国チームは日韓共同開催の2002年の大会を最後にW杯の本大会に姿を見せていない。日韓大会でも1次リーグで3連敗を喫し、無得点のまま屈辱にまみれて会場を去った。

とはいえピッチに中国人選手の姿はなくとも、中国パワーは今大会でも会場とその周辺で存在感を見せつけている。カタール大会の会場の1つ、決勝戦が行われるルサイル・スタジアムを建設したのは中国企業の中国鉄建国際集団だ。

スタンドを埋め尽くすファンの中にも中国人はいる。FIFA(国際サッカー連盟)の発表によると、前回のロシア大会より大幅に減ったものの、今大会でも中国人が購入したチケットは5000〜7000枚に上る。

中国がW杯開幕を前に2頭のパンダをカタールに送ったことも話題を呼んだ。大会スポンサーにはハイセンス、蒙牛乳業、大連万達集団など中国企業が名を連ねている。

チケットの販売数のわりに中国人客の姿を見かけないのは、「ゼロコロナ」政策のせいだ。渡航制限で多くのサッカーファンが国内に足止めされた。

「今回のW杯は中国の異質さ、孤立感を浮き彫りにした。今の中国は閉鎖的になっている」と語るのは、中国のサッカー情報を英語で発信しているサイト、ワイルド・イースト・フットボールの創設者のキャメロン・ウィルソンだ。

「中国人も世界中から集まったサッカーファンと一緒に、お祭り気分で盛り上がればよかった。今の中国にはそうした交流が何よりも必要だ」

実は、カタール大会出場は中国サッカー界の悲願だった。中国が2050年までに「世界のサッカー超大国の仲間入りをする」という野心的な目標を掲げたのは16年のこと。

以後、強化に取り組んできたが、今回ほどW杯出場に執念を燃やしたことはない。予選突破のためには手段を選ばなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中