代表不在でも、奇妙な存在感を放つ中国──スポーツ外交とパンダ外交の先には?
China AWOL at World Cup
W杯開幕に合わせて中国から送られたパンダ、ドーハ近郊の動物園(10月)HAMAD I MOHAMMEDーREUTERS
<2002年日韓共催大会を最後にW杯に出場していない中国。今大会で企業広告の数は世界トップレベルだが、なぜサッカー選手のレベルが上がらないのか?>
11月20日に開幕したサッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会。序盤からの大番狂わせが世界中のファンを驚かせているが、気になるのは中国の不在だ。
中国チームは日韓共同開催の2002年の大会を最後にW杯の本大会に姿を見せていない。日韓大会でも1次リーグで3連敗を喫し、無得点のまま屈辱にまみれて会場を去った。
とはいえピッチに中国人選手の姿はなくとも、中国パワーは今大会でも会場とその周辺で存在感を見せつけている。カタール大会の会場の1つ、決勝戦が行われるルサイル・スタジアムを建設したのは中国企業の中国鉄建国際集団だ。
スタンドを埋め尽くすファンの中にも中国人はいる。FIFA(国際サッカー連盟)の発表によると、前回のロシア大会より大幅に減ったものの、今大会でも中国人が購入したチケットは5000〜7000枚に上る。
中国がW杯開幕を前に2頭のパンダをカタールに送ったことも話題を呼んだ。大会スポンサーにはハイセンス、蒙牛乳業、大連万達集団など中国企業が名を連ねている。
チケットの販売数のわりに中国人客の姿を見かけないのは、「ゼロコロナ」政策のせいだ。渡航制限で多くのサッカーファンが国内に足止めされた。
「今回のW杯は中国の異質さ、孤立感を浮き彫りにした。今の中国は閉鎖的になっている」と語るのは、中国のサッカー情報を英語で発信しているサイト、ワイルド・イースト・フットボールの創設者のキャメロン・ウィルソンだ。
「中国人も世界中から集まったサッカーファンと一緒に、お祭り気分で盛り上がればよかった。今の中国にはそうした交流が何よりも必要だ」
実は、カタール大会出場は中国サッカー界の悲願だった。中国が2050年までに「世界のサッカー超大国の仲間入りをする」という野心的な目標を掲げたのは16年のこと。
以後、強化に取り組んできたが、今回ほどW杯出場に執念を燃やしたことはない。予選突破のためには手段を選ばなかった。