トランプはついに党のお荷物......そして「バイデン外交2.0」始動はいかに?
BIDEN’S FREER HAND
こと外交に関してはバイデンも笑顔でいられそうだ(写真は今年6月にドイツで開かれたG7首脳会議) JOHN MACDOUGALLーPOOLーREUTERS
<アメリカ社会に憎悪をかき立て続けたが、ふたを開ければ不発に終わったトランプ旋風。アメリカの対ウクライナ・対中国外交は、選挙後にこう変わっていく>
狂ったように激しく振れていたアメリカ政治の針が、ようやく正常に戻る兆しが見えた。そんな感じがする。
もちろん、今回の中間選挙の結果はまだ確定していない。だがドナルド・トランプ前大統領とその仲間たちが大きな痛手を喫したのは確かだ。
それでもトランプ自身は、次の大統領選挙に共和党から出馬するつもりでいる。そうであれば今後2年間、共和党が深刻な身内の争いに振り回されるのは必至だ。
その場合、現職のジョー・バイデン大統領は選挙前の予想に反して、少なくとも外交に関しては、自分の政策を遂行しやすくなるだろう。
なぜか。仮に共和党のケビン・マッカーシーが下院議長になったとしても、決して一枚岩ではない党内の調整にてこずるからだ。
一番厄介なのは、トランプの唱えるMAGA(アメリカを再び偉大に)の主張に共鳴する極右の一派だ。共和党は最終的に下院で過半数を制するだろうが、民主党との議席数の差はわずか。内政面の課題で結果を出すためには、何としても党内の結束を維持しなければならない。
それだけではない。今回の選挙では外交政策、とりわけウクライナへの軍事支援に関して、共和党の主張が一貫性を欠くことも明らかになった。
ジョージ・ワシントン大学政治経営大学院のトッド・ベルト教授に言わせれば、「共和党には外交に関して一致した見解がない。ウクライナ支援についても、党内では賛成派と反対派が拮抗している」。
選挙前のマッカーシーは、ウクライナ支援についてもバイデン政権に「白紙委任」はできないと語っていた。だが共和党内でも、現状では支援の継続・拡大を(議会による監視の強化という条件付きで)支持する議員が多数派を占めている。
一方で、多数派に転じた下院共和党がヨーロッパの同盟諸国に批判の矛先を向ける可能性はある。アメリカの負担している金額に比べて、ヨーロッパ諸国の拠出額は格段に少ないからだ。
それ以外の外交課題(例えば中国やイラン、サウジアラビアとの関係など)については、バイデン政権は従来から強硬路線を取っており、共和党との相性はいい。この点は今後も変わらないだろう。