画期的な制度なのに十分に活用されていない、大学生などへの奨学金給付
まずは修学支援制度を周知させることが必要 Nuthawut Somsuk/iStock.
<2020年度から始まった年収380万円未満の世帯への修学支援制度だが、その利用度はあまり高くない>
日本の大学の学費は高いが、2020年度より、高等教育機関に通う学生への修学支援制度が実施されている。住民税非課税世帯の場合、学費はほぼ無償になり、自宅通学生には年額35万円、自宅外通学生には80万円ほどの奨学金が給付される。この奨学金は給付なので、返還の必要はない。
非課税世帯でなくても、年収300万円未満の世帯は上記の3分の2、年収300万円以上380万円未満の世帯は3分の1の支援が受けられる。このように傾斜をつけることで、支援の対象を広げる工夫も凝らされている。消費税を10%に引き上げたことによる増収を財源とするものだが、これまでにない画期的な支援制度と言っていい。
支援対象は年収が380万円に満たない世帯だが、それは大学進学年齢の子がいる家庭の中で何%ほどなのか。やや古いが、2017年の総務省『就業構造基本調査』によると、夫婦と子からなる世帯(世帯主が40〜50代)のうち、年収300万円未満の割合は3.6%、300万円台は5.3%となっている。単純に按分すると、380万未満の世帯の割合は3.6%+(5.3%×0.8)=7.9%となる。
思いのほか少ない印象だが、地域による違いがある。同じやり方で都道府県別の数値を出し、高い順に並べると<表1>のようになる。
ご覧のように10%を超える県が18県あり、3県では15%を超えている。最も高い沖縄県は26.1%で、大学進学年齢の子がいる家庭の4分の1が高等教育修学支援の対象であることが分かる。これは夫婦と子の世帯に限ったデータだが、1人親世帯を加えたら対象はもっと多くなる。
沖縄県の大学進学率は低いが、上記の支援制度についてもっと周知されれば、経済的理由で進学を諦める生徒も減るだろう。26.1%として試算すると、夫婦と子からなる世帯(世帯主が40~50代)のうち、年収が380万未満の世帯は2万1620世帯。同県内の大学の学生で給付奨学金をもらっているのは3759人(2021年度)。前者に対する後者の割合は17.4%でしかない。