最新記事

教育

画期的な制度なのに十分に活用されていない、大学生などへの奨学金給付

2022年11月16日(水)11時10分
舞田敏彦(教育社会学者)

この数値を給付奨学金の利用度とみなし、47都道府県別に算出すると<表2>のようになる。

data221116-chart02.png

東京都と京都府で高い値が出ているが、これは他県から学生が流入していることによる。全国値で見ると、年収380万円未満の世帯(世帯主が40~50代、夫婦と子の世帯)に占める給付奨学金の利用学生(大学)の割合は43.1%。県によっては、この数値が20%に満たない(1人親世帯を分母に加えると、想定される利用率はもっと下がる)。ラフな試算ではあるが、支援制度をもっと周知させる余地があると考えられる。

年収が380万円を超えていても、子が3人以上いる多子世帯は支援を受けられるようにする制度改正も議論されている。高等教育の修学支援は、昔とは比較にならないほど充実してきている。後はそれを周知徹底し、十分に活用するよう働き掛けることだ。

注)本稿では世帯年収の統計を使っているが、総務省『就業構造基本調査』では、世帯所得という言葉が使われている。定義は「世帯主、世帯主の配偶者及びその他の親族世帯員が通常得ている過去1年間の収入(税込み額)の合計」で、給与控除額を差し引く前の年収に相当する額の合算である。よって、本稿では年収という言葉にした。

<資料:総務省『就業構造基本調査』(2017年)
    日本学生支援機構『奨学金に関する情報提供』

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、米株高を好感 上値は重い

ビジネス

英中銀総裁、財務相と1月に中国訪問=英メディア

ビジネス

欧米ステランティス、オハイオ州工場での1100人削

ワールド

アイスランドで史上最年少の女性首相就任、36歳 新
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能…
  • 5
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 6
    「私が主役!」と、他人を見下すような態度に批判殺…
  • 7
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 8
    「オメガ3脂肪酸」と「葉物野菜」で腸内環境を改善..…
  • 9
    「スニーカー時代」にハイヒールを擁護するのは「オ…
  • 10
    「たったの10分間でもいい」ランニングをムリなく継続…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中