最新記事

米政治

トランプが次期大統領になったら「本当に常軌を逸したことが始まる」 人事、軍掌握、対ロシア

IF HE WINS AGAIN

2022年11月16日(水)09時40分
デービッド・H・フリードマン(ジャーナリスト)

221122p22_TRP_03.jpg

フリンの後任を務めたボルトン MARK WILSON/GETTY IMAGES

「到底承認されない『追従者』で政権を埋めるだろう」と、ボルトンは言う。

「国家安全保障の専門家で、第2次トランプ政権の一員になろうと考える者は3人もいないはずだ」

仮に何人かが上院で承認されたとしても、1期目の政権の入れ替わりの激しさを考えれば長くは続かないだろうと、ボルトンは付け加えた。

トランプが任命した人物は長官代行として、政府内の大粛清を実行できる立場になる。

長官代行は省庁の幹部クラスに忠実なトランプ派を置き、さらにその人物が忠実なトランプ派を部下にするという形で、連邦政府全体で4000人もの政治任用者を自派で固めることになる。

既にトランプは「ディープステート(国家内国家)」、つまり官僚機構を通じて政府内に浸透し、保守的な価値観をことごとく覆そうと画策している(と陰謀論者が主張する)リベラル軍団の解体計画について、自分の手の内を明かしている。

大統領退任間際の2020年10月下旬、トランプは連邦政府職員に「スケジュールF」という新たな職種区分を設ける大統領令を発令した。この新分類の下では、数万人分の政府ポストが連邦政府の政策形成に関与可能な職と見なされる。

一見昇進のようだが、とんでもない。スケジュールFに分類されたポストはあらゆる解雇保護規制から外れ、政治任用ポストと同様に上司の政治的気まぐれに対して脆弱な立場になる。

バイデンは大統領就任後すぐにスケジュールFを廃止したが、トランプは容易に復活させることが可能だ。その結果、一部の分野で連邦政府の権限と組織が縮小し、「全面的な規制緩和への回帰が起こるだろう」と、ロリンズは言う。

この区分変更は広範囲の連邦職員に破滅的な影響を及ぼすと、最大の連邦政府職員組合である米政府職員連盟のエベレット・ケリー会長は主張する。

「非政治任用職員のシステムは破壊され、政府内部は政権の手先だらけになる」

政府職員への攻撃はより広範な制度解体の前触れであり、メディケア(高齢者医療保険制度)や社会保障制度などの民営化を視野に入れた動きだと、ケリーは付け加える。

だが、ロリンズの見方は違う。

「官僚機構は、米国民への奉仕から、自分たち自身の保身へと目的を変質させてしまった。スケジュールFは、連邦政府のCEO(大統領)が200万人強の自分のチームを動かし、使命の実現に本気で取り組ませるための小さな一歩だ」

別の元政府高官は、スケジュールFへの不満はエリート意識の表れだと批判した。

「役人たちは多くの点で正常な判断力を失っている。専用駐車場を使えなくしただけで、ペットの首が取れたかのように騒ぐ」

※中編:「トランプは同盟に興味を示したことも理解したこともない」2期目トランプの外交・権力強化予測 に続く。

20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中