最新記事

G20

インドネシア、G20警備強化に伴う「弾圧」 環境会議、自転車デモなど次々中止へ

2022年11月11日(金)12時22分
大塚智彦
G20開催を告げる看板と外国人観光客

環境団体によるデモが話題となるG20だが、今回は? REUTERS

<活動家たちのデモどころか、民間の協賛イベントすらできない事態に──>

11月15・16日にインドネシア・バリ島で開催される予定の主要20カ国・地域首脳会議(G20首脳会議)に関連してバリ島内の警備が強化され、会議開催期間中の交通、通行、航空機の離発着も制限されるなど現地は厳戒態勢となっている。

これに伴いバリ島以外のインドネシア各地でも環境問題を協議する民間の会議が中止に追い込まれたり、自転車でジャワ島からバリ島に向かう環境活動家によるキャラバンが妨害活動にあうなどの「弾圧」が表面化している。インドネシアの有力雑誌「テンポ」の電子版が11月9日に伝えた。

インドネシア政府は「一般の参加を歓迎する」とG20関連の各種団体・組織によるイベントやシンポジウムなどを歓迎する姿勢を事前に示していたが、実際には容赦ない制限や中止要請などでこうした活動はその自由を奪われているという。

インドネシア政府はジョコ・ウィドド大統領がG20の議長を務め、米バイデン大統領や中国の習近平国家主席、日本の岸田文雄首相など各国首脳が一堂に顔を揃える国際会議の成功を期するあまり、度を越した徹底的な治安対策による余波が悪影響を及ぼしていることまでは視野に入っていないといえる。

準備は90%完了と閣僚

ルフット・パンジャイタン調整相(海事・投資)は11月はじめ「G20の準備は90%完了した」と発表し、会議関連施設建設、道路整備などが完成したことを受けて内外に対して会議開催へ万全の態勢が整ったことをアピールしていた。

バリ島内では各種の規制準備が整うとともに兵士4万4300人、警察官3200人によるパトロールや検問などの実施で治安維持も厳格となっている。

G20参加首脳や各国代表団、インドネシア政府関係者には日中韓の電気自動車が提供され、期間中各国首脳のマングローブ地域視察もプログラムに組み込まれるなど「環境に優しいG20、環境問題に積極的に取り組むインドネシア」を前面にPRすることになっている。

バリ島を訪問する習近平国家主席は16日に首都ジャカルタに移動して、ジョコ・ウィドド大統領と共に建設中のジャカルタ=バンドン高速鉄道の試験線での列車試乗も計画されており、11月9日には実際の車両を使った試験走行も行われた。

同高速鉄道は、中国の全面的支援を受けながらも当初予定の2019年開業から大幅に遅れ、2023年3月の完工を目指している。

しかし、短い区間での試運転とはいえ両国首脳の試乗が実現すれば、中国との関係深化のアピールにもなるとしてジョコ・ウィドド大統領は大きな期待を示している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=続伸、ダウ419ドル高 米中貿易戦争

ビジネス

米経済活動は横ばい、関税巡り不確実性広がる=地区連

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米中緊張緩和への期待で安心

ビジネス

トランプ氏、自動車メーカーを一部関税から免除の計画
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    ウクライナ停戦交渉で欧州諸国が「譲れぬ一線」をア…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中