最新記事

東南アジア

ミャンマー軍政が久保田さん釈放、国外退去へ 3カ月半ぶりの解放  

2022年11月17日(木)13時06分
大塚智彦
日本人ジャーナリスト久保田徹さんのポスター

久保田さんの支援者の記者会見(今年7月、東京) ISSEI KATOーREUTERS

<これまでの経緯と突然の解放の背景をさぐる>

ミャンマーの軍事政権は11月17日、中心都市ヤンゴンにあるインセイン刑務所内に収監中の日本人映像ジャーナリストの久保田徹氏(26歳)を恩赦により17日中に釈放するととも国外強制退去処分とする決定を下した。

ヤンゴンの日本大使館に軍政から久保田氏を「今日午後に釈放する」と連絡があったと日本メディア各社が伝えた。これに伴い久保田氏は17日、インセイン刑務所から釈放され、身柄がヤンゴン市内の日本大使館に移されることになる。

久保田氏はヤンゴンの日本大使館に保護され、早ければ近日中にミャンマーから強制退去処分を受けて出国、帰国の途に就くとみられている。

ヤンゴンから日本への直行便は運航されていないことからタイのバンコク経由で帰国するとみられ、バンコクの空港で日本メディアなどの取材を受ける可能性もある。

久保田氏は7月14日にミャンマーに観光ビザで入国。同月30日にヤンゴン市内南ダゴン郡区で行われた「フラッシュ・モブ」といわれる反軍政を掲げる民主派によるゲリラ的、短時間、少人数の抵抗デモの様子を撮影、取材中に近くにいた警察官に拘束、逮捕された。

この際、通訳、コーディネーターとみられるミャンマー人2人も同時に身柄を拘束されたが、この2人は現在も逮捕されたままで消息も明らかではないという。

久保田氏の逮捕容疑は観光ビザでの取材活動が「資格外活動」に当たるとする入国管理法違反容疑と「軍に対する批判的意見を奨励した」として刑法505条の「社会秩序を乱そうとする行為」に基づく扇動罪容疑、さらに「国家の安全、治安維持に有害な情報を拡散した」という電子取引法違反にも問われていた。

8月16日には刑務所内の特別法廷で入管法違反容疑の初公判が非公開で開かれ、それ以降毎週のように公判は開かれていたという。

その後10月5日には扇動罪と電子取引法容疑の裁判が開かれ、即日結審して扇動罪で禁固3年、電気通信法で禁固7年の判決が言い渡されていた。この時の裁判は通常の裁判と異なり、軍事法廷で突然の公判で関係者には寝耳に水だった。

そして最後まで審理が続いていた入管法違反容疑の裁判も10月12日に結審し、禁固3年の実刑判決が下された。

これにより久保田氏は最低でも禁固10年の禁固刑で服役することが確定していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン外務次官、核開発計画巡る交渉でロシアと協議 

ビジネス

トランプ関税で実効税率17%に、製造業「広範に混乱

ワールド

米大統領補佐官のチーム、「シグナル」にグループチャ

ワールド

25%自動車関税、3日発効 部品は5月3日までに発
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中