最新記事

宗教

「脱会届けを受理してくれない」──宗教2世が答えた、ステルス勧誘、脱会拒否、宗教的つきまといの実態とは

2022年11月23日(水)12時00分
荻上チキ(評論家、社会調査支援機構「チキラボ」代表)

「ステレス勧誘」とは何か

続いて問題提起したいのが、「ステルス勧誘の規制」と「脱会手続きの明示義務」である。

「ステルス勧誘の規制」は、宗教カルトなどの問題に限らず、マルチ商法やネットワークビジネスなどの「商業カルト」にもよく見られる手法である。勧誘目的であることを伏せて誘い出したり、宗教法人とは別のフロント団体を作って入会させ、頃合いを見て勧誘を行うのだ。

ちなみに筆者も昔、都内の駅前で、何度も「手相を見せてください」と声をかけられた。一度立ち止まり、話を合わせていたら、「すごい見どころがあります!これもご縁だと思うのですが、私たちと学習するために、ビデオセンターという場所に行きませんか?」と誘われたことがある。

当時私は、旧統一教会などの宗教右派をテーマに論文を書いていたので、「話が合う」のは当然なのだが、実際に誘われてみると、「おお、これが噂に聞いていたやつか」と強い恐怖を覚えたことを記憶している(その時は、行きたいジュンク堂が閉まるので行きません、と断った)。

マルチ商法などについては、勧誘開始前に事業者名や勧誘目的であること等を告げることが義務付けられている。宗教の勧誘もまた、一種の「契約」に類似した行為だと考えるならば、持続的・意図的に行われるステルス勧誘についても、ルール作りが必要ではないかと考えられる。

もちろん、ステルス勧誘時に合わせて行われがちな、「不退去」(帰ってくれない)や「退去妨害」(帰してくれない)についても、厳格な対応が必要であろう。

「脱会手続き」を明示せよ

もう一点の「脱会手続きの明示義務」だが、当事者への調査でも、「そもそも脱会の仕方がわからない」「脱会しようとしても邪魔された」「脱会者が想定されていない」という回答が多く見られた。具体的な記述を見てみよう。


●脱会、というのがどういう状態を指すのか正直わかりませんでした。個人的には宗教から距離をおいていますが、脱会届など出したこともなく、わざわざ出すつもりもないので......。

●脱会届をなかなか事務局が受付しなかった。

●脱会した書類が本当に受理されたかはわからない。ただ幹部に渡すのみ。「地獄に落ちる」と罵られ続けた。

●自分は脱会しているつもりだが、親が勝手に会費を払い続けている。

●教会に脱会を告げた際、信者台帳の破棄を希望したが、神父に「前例がない」と断られた。個人情報保護法を持ち出したり、自分の身内がオウム真理教の名簿にのっていたらどう感じるかと問うたりと説得を試みたが、台帳の破棄を渋ったため、台帳に脱会した旨を明記することを提案し、先方も渋々ながら受け入れた。

●脱会したい旨を幹部に伝えましたが、のらりくらりでなかなか受け付けてくれず、時間がかかりました。時間が経てばあきらめると思っていたようです。父は、私と母が脱会した後も私の名前で献金していて、後で判明した時にやめてもらいました。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中