「脱会届けを受理してくれない」──宗教2世が答えた、ステルス勧誘、脱会拒否、宗教的つきまといの実態とは
「ステレス勧誘」とは何か
続いて問題提起したいのが、「ステルス勧誘の規制」と「脱会手続きの明示義務」である。
「ステルス勧誘の規制」は、宗教カルトなどの問題に限らず、マルチ商法やネットワークビジネスなどの「商業カルト」にもよく見られる手法である。勧誘目的であることを伏せて誘い出したり、宗教法人とは別のフロント団体を作って入会させ、頃合いを見て勧誘を行うのだ。
ちなみに筆者も昔、都内の駅前で、何度も「手相を見せてください」と声をかけられた。一度立ち止まり、話を合わせていたら、「すごい見どころがあります!これもご縁だと思うのですが、私たちと学習するために、ビデオセンターという場所に行きませんか?」と誘われたことがある。
当時私は、旧統一教会などの宗教右派をテーマに論文を書いていたので、「話が合う」のは当然なのだが、実際に誘われてみると、「おお、これが噂に聞いていたやつか」と強い恐怖を覚えたことを記憶している(その時は、行きたいジュンク堂が閉まるので行きません、と断った)。
マルチ商法などについては、勧誘開始前に事業者名や勧誘目的であること等を告げることが義務付けられている。宗教の勧誘もまた、一種の「契約」に類似した行為だと考えるならば、持続的・意図的に行われるステルス勧誘についても、ルール作りが必要ではないかと考えられる。
もちろん、ステルス勧誘時に合わせて行われがちな、「不退去」(帰ってくれない)や「退去妨害」(帰してくれない)についても、厳格な対応が必要であろう。
「脱会手続き」を明示せよ
もう一点の「脱会手続きの明示義務」だが、当事者への調査でも、「そもそも脱会の仕方がわからない」「脱会しようとしても邪魔された」「脱会者が想定されていない」という回答が多く見られた。具体的な記述を見てみよう。
●脱会、というのがどういう状態を指すのか正直わかりませんでした。個人的には宗教から距離をおいていますが、脱会届など出したこともなく、わざわざ出すつもりもないので......。
●脱会届をなかなか事務局が受付しなかった。
●脱会した書類が本当に受理されたかはわからない。ただ幹部に渡すのみ。「地獄に落ちる」と罵られ続けた。
●自分は脱会しているつもりだが、親が勝手に会費を払い続けている。
●教会に脱会を告げた際、信者台帳の破棄を希望したが、神父に「前例がない」と断られた。個人情報保護法を持ち出したり、自分の身内がオウム真理教の名簿にのっていたらどう感じるかと問うたりと説得を試みたが、台帳の破棄を渋ったため、台帳に脱会した旨を明記することを提案し、先方も渋々ながら受け入れた。
●脱会したい旨を幹部に伝えましたが、のらりくらりでなかなか受け付けてくれず、時間がかかりました。時間が経てばあきらめると思っていたようです。父は、私と母が脱会した後も私の名前で献金していて、後で判明した時にやめてもらいました。