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ウクライナ戦争

ウクライナと心中覚悟のプーチン──なぜ私たちは核戦争のリスクを軽く見たがるのか?

Before a Nuclear War Begins

2022年10月19日(水)12時58分
アリエル・レビテ(カーネギー国際平和財団)、ジョージ・パーコビッチ(カーネギー国際平和財団)

言うまでもないが、侵略者に領土を占領されたままの状態で停戦に応じるのは好ましくない。核の脅しに屈してそうするのは最悪だ。そんなことをすれば、パキスタンや中国のような核保有国が、カシミール地方や台湾で同様な行動に出る恐れがある。

しかし、それでもロシアを追い込みすぎて核兵器を使わせてしまうケースに比べれば、ずっとましだ。核戦争が始まってから停戦交渉に入っても、ウクライナが領土を回復できる保証はない。その前にアルマゲドン(最終戦争)で世界が終わるかもしれない。

ところがロシアもウクライナも、この自明の事実を認めようとしない。ウクライナ大統領ウォロディミル・ゼレンスキーとその支持者たちは最近の戦果で勢いづき、プーチンの顔を立てるような妥協に応じる気配はない。そして冬が来るまでに、もっと戦場で結果を出そうとしている。

プーチンも強気だ。最近の劣勢にもかかわらず、依然として勝てると信じている。必要ならば戦域を拡大し、より破壊的な戦術や兵器を繰り出して、ウクライナとその同盟諸国を疲弊させる。それが国内で自身の地位を守る唯一の道だと信じている。

だから、この先の数週間が最も危険だ。冬が来れば雪と寒さで身動きが取れなくなり、春までは戦況がほぼ凍結されてしまう。その前に結果を出したいと、誰しも思う。

だが核兵器を使わせてはいけない。今こそ世界の指導者たちはウクライナに働き掛け、プーチンのロシアが受諾できそうな条件で停戦を提案するよう促すべきだ。

その際は、まずアメリカとNATO諸国が音頭を取り、できることなら中国の習近平(シー・チンピン)国家主席とインドのナレンドラ・モディ首相も抱き込みたい。

ウクライナから停戦交渉を申し出れば、ロシアは核兵器を使いにくい。だからウクライナの利益になる。合意を取り付け、停戦遵守の監視態勢や紛争解決の手続きを決めるには時間がかかる。その間もウクライナは軍事作戦を続けていいが、クリミア半島への進軍は控えるべきだ。

一方、停戦の申し入れを受けた後に核兵器を使うようなことがあれば、ロシアは国際社会で一段と孤立し、北朝鮮のようなのけ者となるだろう。

中国もインドも、既に戦闘の終結を望むと表明している。どちらにとっても、それが国益にかなうからだ。

習もモディもプーチンと話せるし、一定の影響力もある。そしてもちろん、中国は眼前の敵(台湾と日本、韓国)が独自の核武装に動くことを望んでいないし、インドは仇敵(核保有国のパキスタン)が核の脅威をちらつかせるような事態を望んではいない。

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