プーチンの部分動員令でロシア経済は回復腰折れか 生産性や需要に打撃
部分動員は、人的資本の喪失もたらす
ベテランのエコノミスト、ナタリア・ズバレビッチ氏は「部分動員が主としてもたらす結末は、人的資本の喪失だ」と述べ、いつトンネルの出口の明かりが見えるのか分からない以上、最大限の恐怖と何もかもが不確実という状況が、急激に広がってくると説明した。
実際、部分動員の期間や最終的な規模はなお判然としない。こうした中でロシアのメディアは、推定で70万人が部分動員令の発表以来、国外に逃げ出したと伝えている。
ロクコ・インベストの投資責任者、ドミトリー・ポレボイ氏の見積もりでは、ロシアの労働力人口の0.4─1.4%が既に逃亡したか、戦場に投入されようとしている招集兵になっているという。
ポレボイ氏は、折しもロシアは先進的な機器や技術を手に入れにくくなっている局面にあるだけに、部分動員はロシアの人口動態、労働市場、投資環境という観点で痛手になると分析。「人的資本だけが経済をけん引する力として計算できたのに、生産年齢人口の一部は徴兵され、別の一部は逃げ出している」と嘆いた。
動員作業では組織的な混乱が生じており、何人かの閣僚があわてて自分の重要な部下たちの徴兵猶予手続きに乗り出すなどの光景も見られる。その一方、中小企業が部分動員の最大の被害者になろうとしている。
ズバレビッチ氏は「最悪の事態が訪れるのは、中小企業だろう。徴兵猶予を働きかける政治的手段はなく、2人か3人の要となる従業員を失えば、事業が成り立たなくなる」と話す。
間の悪いことに物価が再び上昇する気配を見せ、中銀の利下げサイクルは幕切れを迎えそうで、部分動員が経済にショックをもたらせば、政策担当者にとって新たな頭痛の種になってもおかしくない。
(Darya Korsunskaya記者、Alexander Marrow記者)
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