大規模ミサイル攻撃で墓穴を掘ったプーチン、敗戦の足音
Why Russia's Airstrikes Could Signal a Defining Chapter in Ukraine War
動員されたロシア兵(その多くは正規の訓練を受けず、十分な装備も与えられていない)がどっと戦場に送り込まれれば、ウクライナは第二次大戦中にドイツと旧ソ連の激戦地となった時のように、「血の海」と化すだろうとイグナトフは言う。
「プーチンはそうなっても構わないと考えているのだろう。でなければこれほど多くの動員をするはずがない」
最も懸念されるのは、ロシアの攻撃が核使用にエスカレートする事態だが、「その可能性は低い」と、イグナトフはみる。「地上戦での劣勢を一気に巻き返すには大規模攻撃が必要だが、小型核を使用しても戦況は変えられない」からだ。
10日から始まったロシアのミサイル攻撃は、エネルギー施設などの生活インフラと民間人を標的にしたもので、首都キーウ(キエフ)をはじめ、各地の都市で多数の死傷者が出たほか、停電や断水、ネットがつながりにくくなるなど市民生活に犠牲を強いた。
西側は即座にロシアを非難した。米政府はこれまでに提供したシステムよりも「高度な」防空システムをウクライナに供与すると宣言。ドイツは最新鋭の防空システム「IRIS-T」の供与を開始、11日に最初の1基がウクライナに到着したと発表した。IRIS-Tの供与は以前から決まっていたが、ロシアのミサイル攻撃を受け、年内に輸送する計画を前倒しした。アメリカも地対空ミサイルシステム「ナサムス(NASAMS)」2基の供与を急ぐことを決めた。
ロシアの孤立に拍車がかかる
ウクライナ政府はロシア軍の侵攻が始まった当初から、新型の防空システムの供与を求めていたが、これまで西側の反応は鈍く、ウクライナ当局を嘆かせていた。
本誌が入手したメモによると、ウクライナ外務省は、ロシアのミサイル攻撃をきっかけに西側が「ロシアを政治的、経済的に完全に孤立させる」方針を固め、「前例のない」措置を取るものと期待している。防空システムやより射程距離の長いミサイルシステムの供与に加え、「ロシアをテロ国家に認定」するというウクライナ政府の要請も受け入れられる可能性があるという。
ロシアの暴挙に対し、「世界は今こそ、民主主義は専制主義よりも強固であり、国際秩序は守らなければならないことを断固たる姿勢で示すべきだ」と、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の元報道官でジャーナリストのユーリヤ・メンデルは本誌にそう語った。
リビウのキラル副市長も西側の支援を期待している。「ロシアの侵攻開始から8カ月近く、言い続けてきたことだが、最新の防空システムと兵器、訓練された兵士があれば、ウクライナは前進できる。ロシアの攻撃がジェノサイド(集団虐殺)の様相を呈しているのは明らかだ。プーチンがウクライナ人を皆殺しにするのを、世界も座して待ちはしないだろう」