ロシアの戦闘能力にダメージを与える制裁「輸出管理」とは何か
STRANGLING RUSSIA
輸出管理がロシアの防衛産業にダメージを与え、戦争継続が困難に? MAXIM SHEMETOV-REUTERS
<冷戦時代のココムを彷彿させる体制が構築された。金融制裁に比べあまり話題になっていないが、じわじわと効果を発し、ロシアの戦争継続を困難にするだろう>
ロシアのウクライナ侵攻を受け、欧米諸国はロシアに対して前例のない経済制裁を科している。このうち資産凍結やロシアの航空会社の乗り入れ禁止、そして金融制裁の影響については多くが語られているが、輸出管理はあまり話題になっていない。
アメリカをはじめとする世界38カ国は、ロシアに対する斬新かつ複雑な輸出管理体制を構築してきた。その高度に足並みのそろった体制は、かつてソ連を孤立させ、封じ込め、究極的には崩壊させる助けになった輸出管理を思い起こさせる。
経済制裁と輸出管理は一緒くたにされることが多いが、その仕組みは大きく異なる。
経済制裁は貿易や金融取引をほぼ即座にストップさせる一方、輸出管理は対象国が原材料や技術にアクセスするのを制限する。即時的な効果はないものの、半導体や航空機部品など戦略的ハイテク製品の輸出が規制されれば、ロシアの防衛産業がダメージを受け、戦争の継続が困難になってくるだろう。
もちろん、輸出管理が技術移転を完全に阻止できたことはほぼないし、対象国が他の方法(内製化や第三国を経由した制裁回避、あるいは輸出管理を破る欧米企業の支援など)で穴を埋めるのを永遠に阻止することはできない。
だが、欧米諸国は冷戦時代に、ココム(対共産圏輸出調整委員会)などを通じて、ソ連をはじめとする共産圏諸国に戦略的技術が渡るのを阻止した長い経験がある。冷戦後もロシアに対しては一定の輸出管理がなされてきたが、あくまで限定的で、さほど徹底されてもいなかった。
だが今、ロシアに対する輸出管理は、冷戦期以来の包括的なものになっている。
アメリカの技術を使って外国で製造された製品をロシアへ再輸出することも禁止された。これまでこの「外国直接製品規制」が発動されたのは中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)だけで、国に対して適用されたことはない。
さらに、米商務省が作成する事実上の禁輸措置対象リスト(エンティティー・リスト)に、ロシアン・テクノロジーズ(ロステック)や航空機で知られるスホイなど、ロシア関連企業100以上が追加された。