なぜ中国もロシアも手を出せない? 世界が知らぬうちに激化した中央アジア「戦争」の戦況
What’s Behind the Flare-up
地域の不安定化は中ロとも望まない
一方、キルギスの政権は確立されたばかりでタジキスタンに比べ独裁色は薄い。ジャパロフ陣営はポピュリスト的政策を掲げて昨年の選挙で勝利。領土主権と国境警備を優先課題とし、トルコの軍用ドローンとロシアの装甲兵員輸送車を購入して軍事力のてこ入れを図った。
当事国が小国であっても、中央アジア情勢が不安定さを増すことはロシアも中国も望んでいない。だが強い経済的影響力を持つ両国でも中央アジアでの紛争は阻止できない。それどころか、キルギスとタジキスタンの衝突はSCOもCSTOも加盟国間の緊張を阻止できないことを露呈した。
今後、中央アジアにおける紛争の阻止・解決は、欧州安保協力機構(OSCE)、米政府、EUなど欧米のパートナーが紛争調停に前向きかどうかに懸かってくるだろう。
9月、ナンシー・ペロシ米下院議長はアルメニアを訪問。南カフカス地域の平和維持に対するアメリカの支持を示した。中央アジアでも今こそ欧米のパートナーが地域の平和を支持し、これ以上死者が出ないようにするべきだ。中央アジアで欧米の存在感が増すことには中ロの反発が予想されるが、代案が示せるわけではなく、より平和な中央アジアを実現するためにはほかに道はないだろう。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら