最新記事

ロシア

ロシア兵の「不満爆発」動画に、やらせ疑惑...プーチン統制「弱体化」で内部分裂か

Putin has "lost control" as infighting breaks out among Russia's elite

2022年10月7日(金)17時47分
イザベル・ファン・ブリューゲン
プリゴジンとプーチン

レストランでプーチンの補佐をするプリゴジン(2011年11月) REUTERS/Misha Japaridze/Pool

<動員されたロシア兵が、待遇の劣悪さや情報伝達の悪さに不満を爆発させる動画が投稿されたが、そこに映った「バッジ」に疑惑の目が向けられている>

ロシアのウラジーミル・プーチンが発動させた部分動員令で招集されたロシア兵たちが、ウクライナへの派遣を前に早くも待遇についての不平を並べ立てている様子を捉えた動画が、ソーシャルメディア上に投稿された。

■【動画】「物資も手当てもまったくない!」...やらせ疑惑が出たロシア兵の動画

10月5日、メッセージアプリ「テレグラム」の親ロシア派のチャンネル「Rybar」に1本の動画が投稿された。ロシア軍の兵士たちが、旅客列車の前に集まっている様子を撮影したと思われる動画だが、位置情報データによれば、ウクライナとの国境に近いロシア西部のベルゴロドで撮影されたものだという。

撮影している人物は、仲間の兵士たちにカメラを向けながら「我々は今、ベルゴロドにいる。全部で約500人いる。物資面での援助も、金銭的な手当ての支給も......まったくない!」と述べている。

兵士の多くは、マスクで顔を覆っている。撮影者は動画の中で、集まった男たちは、プーチンが9月21日に発動した部分動員令の一環として招集された兵士だが、自分たちがどこに配備されるのかさえ知らされていないとも述べた。「準備はまったく行われていない」と彼は述べ、別の人物は「食事も自腹だ」とつけ加えた。

動画は「やらせ」の疑いがあるとの指摘も

動画を分析したジャーナリストらは、この動画はロシアの傭兵組織である「ワグネル・グループ」の創設者エフゲニー・プリゴジンが、ロシア政府によるウクライナ戦争への対応に対する不満から「演出」したものである可能性があると示唆している。

ラジオ・リバティのジャーナリストであるマーク・クルトフは、動画に映っている男たちの中に、ワグネル・グループのシンボルが描かれたバッジを着けている者が複数いるようだと指摘。位置情報データが確認される前の段階で、「どこで撮影されたものにせよ、やらせの臭いがしてきたように思う」とツイートし、さらに次のように書き込んだ。

「動画はワグネル寄りのチャンネルに投稿され、さらにリポストされており、その内容は『セルゲイ・ショイグ(国防相)を更迭せよ』というプリゴジンの主張と合致している。それに一部の者がワグネルのバッジを着けているのも見て取れる。また動画の中のほぼ全ての『哀れな招集兵たち』が目出し帽で顔を隠している」

調査報道集団「ベリングキャット」の創設者であるエリオット・ヒギンズも、動画はプリゴジンが、ロシア政府の評判を落とす目的で「演出」したものかもしれないと示唆した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

なるべく早い時期に渡米して意見交換したい=米関税で

ビジネス

全国CPI、1月コアは+3.2%に加速 生鮮食品主

ワールド

バー米FRB副議長、銀行規制弱体化の弊害を警告 退

ビジネス

「ミーム株王」コーエン氏がアリババ株追加取得=WS
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 7
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 8
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 9
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中