中国共産党大会、アナリストも見過ごす注目点「政治活動報告」
DIVINING THE PARTY CONGRESS
【3】対台湾政策はさらに強硬化?
前回の政治活動報告では、台湾問題での強硬姿勢が目立った。「国家主権と領土的一体性を断固として守り、国家分断という歴史的悲劇の再現は決して認めない。いかなる分離活動であれ、中国国民は断固反対する」と、習は述べている。
さらに、中台が「一つの中国」原則に口頭で合意したとされる1992年コンセンサス(九二共識)の重要性も繰り返し強調した。当時、台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は就任からわずか1年5カ月の「新人」だったため、この漠然とした合意を承認するよう蔡を説得できると、中国はまだ期待していたのかもしれない。
台湾をめぐる中国政府の発言は以来、さらに強硬度を増した。最も顕著な例が、武力行使を選択肢に挙げた2019年の「『台湾同胞に告げる書』発表40周年」記念式典での習の演説や、昨年8月に発表した台湾統一に関する白書だ。
統一という宿願の達成をさらに長く待つ気はないと、習はより公然と断言するようになっている。「中台分裂」を「世代から世代へ受け継がせる」わけにはいかないという主張は、党の公式方針になるのか。
【参考記事】中国、強硬外交路線の堅持表明 高官「闘志燃やし続ける」
【4】一帯一路は行き止まり? 新たな肝煎り案件は?
政治活動報告でどのスローガンが脚光を浴び、どれが触れられずに終わるかに注目すれば、各種イニシアティブへの党の投資状況が見えてくる。なかでも国際的に最も注目を集めてきたのが、2013年秋にスタートした一帯一路構想だ。
前回党大会で、習は「一帯一路を優先事項として追求する」と宣言。さらに重要なことに、一帯一路を推進するとの文言が共産党の最高規則である党規約に盛り込まれた。
だが、ルーマニア・アジア太平洋研究所のアンドレア・ブリンザ副所長がディプロマット誌で指摘するように、中国政府指導部、とりわけ習本人の公的発言からはこの1年間、一帯一路への言及がひそかに姿を消している。それでも「一帯一路にまつわるアイデア群は消滅していない。むしろ、新たな筋書きであるグローバル発展イニシアティブ(GDI)へと変化している」という。
一帯一路の実績への疑問は根強い。そうしたなかでアイデアが移行しているなら、特に習が昨年9月に提起したGDIと比較して、今や一帯一路はどう位置付けられるのか。
GDIに伴う形で、今年4月に提案されたグローバル安全保障イニシアティブも、政治活動報告を通じてトップレベルの承認を得る可能性がある。政治活動報告での言及の有無は取り組みへの中国の本気度、ひいては国際社会がどこまで本気で受け止めるべきかを教えてくれる。