最新記事

ワクチン

英政府が妊娠・授乳中のワクチン「推奨せず」とのツイート氾濫...真偽をファクトチェック

Has Advice On Pfizer Vaccine Use During Pregnancy Changed?

2022年9月3日(土)20時05分
トム・ノートン
妊婦のワクチン接種

米ペンシルベニア州で新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける妊娠中の女性(2021年2月) Hannah Beier-Reuters

<英政府のウェブページのものとしてワクチン接種を「推奨しない」との画像が貼り付けられたツイートが拡散されているが、事実はどうなのかを検証>

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はすでに、アメリカ人の間で大きな問題ではなくなりつつあるのかもしれない。だが一方で、ワクチンに関する誤った情報はオンラインを席巻し続けている。なかでも人々を惑わせている「言説」の1つに、「妊娠中や授乳中の人のワクチン接種をイギリス政府が推奨しなくなった」というものがある。これは本当なのか?

■【写真】拡散されているワクチン反対派のツイートが引用するウェブページの画像

最近では、ワクチン懐疑派がジョー・バイデン米大統領の感染に乗じ、ウイルスやワクチン接種について誤解を招くような主張を展開している。また政府が公開した情報を、文脈を無視して引用するといった使い古された手法が、ワクチンの安全性について人々を惑わせるために今も使われている。

8月、イギリス政府がファイザー製ワクチンを妊娠中や授乳中に使うことを推奨しなくなったとするツイートが複数投稿された。この主張はアメリカでも、米総合格闘家ジェイク・シールズらによって共有され、拡散されている。

では実際のところはどうなのか。英医薬品医療製品規制庁(MHRA)は、米疾病予防管理センター(CDC)と同様に、承認したすべてのワクチンの安全性プロフィールを定期的に更新し、アドバイスを提供しており、ウェブサイトで確認できる

MHRAが妊娠中や授乳中の女性に対して言っていること

本記事の執筆時点では、MHRAは妊娠中や授乳中の女性に対し、ファイザー製ワクチンの使用を控えるよう勧告して「いない」。

MHRAのウェブサイトには、次のように書かれている。「現時点では、授乳中のCOVID-19ワクチン接種が、母乳で育てられている子供に害を与える、あるいは、授乳の能力に影響を及ぼすという証拠は存在しない」

また「COVID-19ワクチンは、生きたウイルスを含まない不活性ワクチンであり、授乳中の不活性ワクチン接種に関連した既知のリスクは存在しない」とあり、「英政府の諮問機関であるワクチン・予防接種合同委員会(JCVI)は現在、授乳中の母親は、年齢に応じて適切なCOVID-19ワクチンを提供されるべきと助言している」と、ウェブサイトには書かれている。

MHRAはさらに、次のように続けている。「ファイザー/ビオンテック製COVID-19ワクチンとモデルナ製COVID-19ワクチンの製品情報は、安全性データを反映すべく更新されてきており、妊娠中も使用可能であることが示されている」

「推奨しなくなった」とする側の一連のツイートで言及されていた「更新」は、MHRAのアドバイスの一部ではない。2020年以降更新されていない、政府の別のウェブページから引用した情報であり、文脈を無視して紹介されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中