惨敗予定だった民主党になぜ逆転の可能性が?──泡沫すぎる共和党候補たち
AGAINST ALL ODDS
ウィスコンシン州の現職ジョンソンは最近出演したトーク番組で、社会保障制度とメディケア(高齢者医療保険制度)の支出を削減する権限を政府に与えるべきだと語った後に、支持の高いこれらのプログラムを廃止したいわけではないと釈明した。
「完敗もあり得る」と、今秋で引退する共和党上院議員の長年の側近は不満を漏らす。「候補者というよりピエロの集まりだ。よろしくない」
ドーナンも同様の懸念を示す。「ウィスコンシン州は退職生活を送る人が多い。ジョンソンは自分の聴衆のことを知らないか、有権者の考えとは全く関係のない非常識なイデオロギーに固執しているのだろう」
一方で、ここ最近、民主党の上院議員候補の資金集めは目を見張るほどだ。連邦選挙管理委員会の資料によると、今年4~6月にジョージア州で共和党のウォーカーが620万ドルを集めたのに対し、民主党の現職ラファエル・ワーノックは1720万ドル。フロリダ州では共和党の現職マルコ・ルビオの約400万ドルに対し、民主党のバル・デミングス下院議員は1250万ドルを集めた。
民主党のストラテジストによると、中絶は憲法上の権利であるとする判例を連邦最高裁が覆す意見書の草案が流出した5月初旬と、実際に判断が下された6月下旬に調達額が膨れ上がった。
各陣営ではボランティアを呼び掛ける人の数も急増しており、この問題が、経済の悪化で低迷していた民主党の選挙戦に新たな活力を与えていることがうかがえる。
「中絶の権利と判例が覆されたことは民主党を奮い立たせている」と、党の上院選挙対策委員会のノラ・キーフ広報担当は言う。
さらに、共和党議員が全米で中絶を禁止する連邦法を成立させようとしていることや、最高裁の判断を受けて妊娠6週以降の中絶を禁止したオハイオ州で、10歳の少女がレイプされて妊娠したが、中絶手術を受けるために隣のインディアナ州に行かなければならなかったことなどが、この問題を鮮明にしているとキーフは続ける。
共和党は大逆転劇に期待
共和党陣営は、中絶の権利は寄付やボランティアの動機にはなるが、民主党が期待するほど投票率を引き上げないかもしれないと反論する。