最新記事

統一教会

【寄稿:有田芳生】全国から91人の女性信者が旅館に集められ... 統一教会「政治秘書養成」秘録

A TAINTED TRAJECTORY

2022年9月14日(水)10時05分
有田芳生(ジャーナリスト、前参議院議員)
統一教会、文鮮明

一時的に高まった統一教会への注目は長続きしなかった(92年8月の合同結婚式での文夫妻) AP/AFLO

<統一教会と政治家との関係の背後には「空白の30年」と長年にわたる戦略があった>

旧統一教会(現在は世界平和統一家庭連合だが、組織の実態も教義も同じ)やフロント組織と自民党を中心とする政治家との関係が続々と明らかにされ、社会問題化している。なぜこれほどまで政治の世界に深く浸透したのだろうか。

歴史を振り返れば、2つの原因がある。まず指摘しなければならないのは「空白の30年」だ。

1992年8月25日に韓国・ソウルで行われた統一教会による3万組の国際合同結婚式には有名歌手やスポーツ選手が参加。週刊誌、テレビのワイドショー、スポーツ新聞が大きく報じた。

報道は芸能的内容から始まり、徐々に信者たちが行っていた反社会的な霊感商法にメスが入っていった。霊感商法とは先祖の霊のたたりなどを語ることで他人を恐怖で縛り、印鑑、壺、高麗人参濃縮液、多宝塔などを不当に高額で売りつけるもの。例えば原価3万円の壺が140万円、60万円ほどの多宝塔は911万円で売られていた。

だがテレビのニュースなどでは扱われず、1995年3月20日の地下鉄サリン事件を実行したオウム真理教のあふれんばかりの報道以降、統一教会の存在は社会から隠れてしまった。

なぜ政治家は旧統一教会に接近したのか。旧統一教会は1954年に韓国で設立され、日本では1959年に正式に結成。東京都による宗教法人としての認証は1964年だ。合同結婚式など特異な儀式を行う宗教団体だから、日本の政治家たちは当初は警戒感を抱いていた。

ところが1968年に韓国と日本で結成された関連政治団体の国際勝共連合は「反共産主義」を前面に出す強烈なイデオロギーを軸にして、冷戦が激化するアジアと日本で保守政治家と容易に結び付いた。

私はある右翼の大物に事情を聞いたことがある。話を聞いたのは、戦前からの右翼で文鮮明(ムン・ソンミョン)教祖や久保木修己・日本統一教会初代会長、国際勝共連合初代会長と親しかった故・畑時夫だ。

畑は文鮮明教祖のことを「宗教を軸にした国際的錬金術師」だと評し、日本の政治家と深いつながりができた理由をこう語った。

「勝共ということで日本の政治家はだまされた。これが統一教会ということなら、政治家もこれほどまで接近しなかっただろう」

秘書を養成し議員に送り込む

旧統一教会には政治家との関係を持つ強い動機があった。文鮮明は1984年にアメリカで脱税の実刑判決を受け、入管法の規定で日本に入国できなかった。韓国の統一教会本部にとって、資金源でもある日本への教祖の入国は内部結束のために是非とも実現しなければならなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震、死者1700人・不明300人 イン

ビジネス

年内2回利下げが依然妥当、インフレ動向で自信は低下

ワールド

米国防長官「抑止を再構築」、中谷防衛相と会談 防衛

ビジネス

アラスカ州知事、アジア歴訪成果を政権に説明へ 天然
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 9
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 10
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中