最新記事

核戦争

ロシアとの全面核戦争に現実味、シミュレーション動画の再生が急増

Nuclear War Simulator Shows What War With Russia Would Look Like

2022年9月15日(木)19時48分
アリストス・ジョージャウ

一発の戦術核の応酬があっという間に世界全面核戦争に広がった(「PLAN A」nuclear war simulation よりキャプチャ)

ロシアとNATOが核戦争に突入したら、数時間以内に何百万人もの死者が出る──最初の一発が発射された後、刻々と展開する恐るべきシナリオをリアルに示した動画がいま注目を集めている。

「プランA」と題した4分間の動画は、米プリンストン大学の科学・地球規模安全保障プログラムに携わる研究者たちが作成したもの。ロシアのウクライナ侵攻で核使用のリスクがかつてなく高まるなか、核戦争の影響を予測するシミュレーションに多くのビューワーが関心を寄せている。

ロシア軍は今年2月24日、首都キーウ(キエフ)近郊をはじめウクライナ各地に侵攻を開始。ウクライナ東部で2014年から続いていた戦闘が全土に拡大した。

ロシアのウラジーミル・プーチンが核使用に踏み切るかは不明だが、ウクライナにおける戦闘の激化で核戦争勃発のシナリオが現実味を帯び、差し迫った脅威として議論を呼ぶようになった。

「冷戦終結以降、今は最も深刻な危機の最中にある。本格的な核戦争のリスクは依然として『小さい』と、多くのアナリストは言うかもしれないが、そうであってもロシアと米軍主導のNATOが核使用に踏み切る可能性は無視できない」──プリンストン大学公共国際問題大学院と機械航空宇宙工学部の准教授で、プランAの作成に関わったアレックス・グレーザーは本誌にこう語った。

意図の読み違えが大惨事に

「いま私たちが直面しているような危機では、しばしば敵対する2陣営が相手の出方を読み違える。ロシアとNATOの間では今や水面下の対話ルートがほとんど機能しておらず、偶発的な衝突が起きやすい」

今年に入る前の段階ですら、米ロは長年効力を保ってきた核軍縮の枠組みに背を向け、新型核兵器の開発に乗り出していた。これにより、核兵器の使用が想定される範囲が一気に広がった。

プランAは2017年にプリンストン大学のバーンスタイン・ギャラリーでの展示のために制作され、2019年にYouTubeで公開された。ロシアとNATOの核戦争の「人類の破滅につながりかねない」影響をリアルに浮かび上がらせる映像だ。

公開当初は反響を呼んだものの、その後再生回数は伸び止まっていた。グレーザーによれば、今年2月末のウクライナ侵攻開始後にプーチンが核使用の可能性をほのめかしたとたん、アクセス数が急増。再生回数は100万回を突破した。

動画は局地的な核使用があっというまに地球規模の大惨事に発展するさまを描いている。展開するシナリオは、入手可能な科学的証拠に基づいてシミュレートされたものだ。

【動画】米ロ全面核戦争シミュレーション

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英小売売上高、1月は前月比+1.7% 予想を大幅に

ビジネス

テスラによる日産投資計画、菅元首相らグループが立案

ビジネス

英スタンチャート、24年税前利益18%増 自社株買

ビジネス

中国企業、オフショア資金調達が加速 ディープシーク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    ハマス奇襲以来でイスラエルの最も悲痛な日── 拉致さ…
  • 10
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 8
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 9
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中