最新記事

核戦争

ロシアとの全面核戦争に現実味、シミュレーション動画の再生が急増

Nuclear War Simulator Shows What War With Russia Would Look Like

2022年9月15日(木)19時48分
アリストス・ジョージャウ

動画の作成に当たっては、「米ロ軍の現在の配置、核戦争の作戦計画、核兵器の攻撃目標に関する独立系の研究機関の評価を参考にした」と、グレーザーは言う。「現在配備されている核兵器、兵器生産、特定兵器の攻撃目標とみられる地点などのデータに基づきシミュレーションを行い、さらに事態の進展を示すため、戦争のどの段階にどの順番で、どの目標にどの兵器が使用されるかを予測した」

ただし、「言うまでもなく軍事機密は入手できないし、特定兵器の攻撃目標の予測には、しばしば単純なルールを当てはめざるをえなかった」と、グレーザーは認める。

戦争の各段階における核攻撃直後の死傷者数は、ネット上で公開されているNUKEMAPを使って割り出した。これはスティーブンズ工科大学のアレックス・ウエラースタインが開発したツールで、地図上に特定の核兵器を落とせば、汚染範囲が表示される。

「予測では戦争開始から数時間以内に900万人を超える死傷者が出る」と、グレーザーは言う。加えて、「医療システムの崩壊、放射性降下物、さらには地球全体が核の冬に見舞われる可能性など長期的な影響により、夥しい数の死者が出るので、最終的な人的被害はそれよりはるかに大きくなるだろう」。

とめどないエスカレーション

シミュレーションは、通常兵器による紛争の最中から始まる。ロシアがNATOの進軍を阻止するためにカリーニングラード近郊の基地から警告として核爆弾を1発放つ。これに対し、NATOが1発の戦術核で報復攻撃を行う。

ヨーロッパを舞台とした双方の核攻撃はたちまちエスカレートし、NATOの基地と進軍するNATOの部隊をたたくため、ロシアは爆撃機や短距離弾道ミサイルを使って300発の核を使用する。

ヨーロッパの多くの地域が破壊されるなか、NATOはロシアの核部隊と核兵器システムを標的に、アメリカ本土や潜水艦から核攻撃を行う。ロシアはサイロや軍用車両、潜水艦から核ミサイルを発射して必死の応戦を試みる。

戦争の最終段階では、ロシアとNATOはいずれも相手陣営の最も人口の多い30の都市と工業地帯など経済の要衝を標的に据え、人口規模に応じて、1カ所につき5〜10個の核弾頭を使用し、目標地点を回復不能なまでに破壊し尽くす。

グレーザーによれば、地球規模の核戦争は「最悪の展開を想定したシナリオ」とみなされているが、プランAという動画のタイトルが示すように、こうした展開は軍事作戦の標準的なマニュアルに含まれている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中