ミャンマー当局、ヤンゴン在住の元英国大使を拘束 外交交渉の人質か?
長引く日本人久保田氏の拘留
ミャンマーでは7月30日にヤンゴン市内での反軍政デモを取材中の日本人映像ジャーナリスト久保田徹氏が当局に身柄を拘束され、インセイン刑務所に収監されている。
久保田氏はインセイン刑務所内に設けられた特別法廷で審理が行われている。久保田氏が問われているのも入管法の「資格外活動」と扇動罪とされているが、入管法違反は観光ビザでミャンマーに入国しながらジャーナリストとして活動したことが「資格外活動」に該当するとして訴追されている。
このため当初予想された早期解放が長引いており、日本大使館やミャンマーを訪問して軍政トップのミン・アウン・フライン国軍司令官と会談した自民党関係者の懇請にも関わらず拘束が続いている。
このように軍政は民主派の活動を厳しく取り締まるなかで、特に外国人による活動、情報発信に神経を尖らせていることが久保田氏やボウマン氏の「摘発」につながったとの見方が有力だ。
ミャンマー軍政に対して日本政府が久保田氏解放を求めているケースと同様、今後は英国政府もボウマン氏の早期釈放を求める外交交渉を根気強く続けることが求められる事態となっている。
ミン・アウン・フライン国軍司令官率いる軍政は久保田氏やボウマン氏という「外交カードを使ううえでの人質」を確保したことになり、これを利用して食糧などの経済支援交渉を有利に運びたいとの意図があるのは確実とみられており、今後の軍政の出方が注目されている。
それと同時にミャンマー国内で活動する外国人や新たに入国する外国人には特段の注意が求められている。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など