長引く干ばつに人工降雨で対抗する中国
China Has Started Geoengineering Rain Over Extreme Heat and Drought
長江南岸の八陽湖の堤防を歩く人物(8月24日) Thomas Peter-REUTERS
<世界を襲ったこの夏の異常な熱波で、地球を冷やす最終手段ジオエンジニアリングがますます現実味を帯びる>
この夏記録的な猛暑に見舞われている中国では、長引く干ばつの影響を緩和するため、地方自治体が人工的に雨を降らせる計画を検討している。
中国の中部と南部を流れる長江は一部で川底が露出するほど水位が低下。流域では電力不足で工場が操業停止に追い込まれ、秋の収穫を控えて作物への影響も懸念されている。
自治体が使用を検討しているのは、雲の中に飛行機を飛ばして、ヨウ化銀を散布し、雨を降らせる技術だ。地球温暖化の進行に伴い、今後はジオエンジニアリングと呼ばれる、こうした大規模な工学的手法で猛暑や干ばつに対処する必要性が出てくると科学者たちはみている。
「気候危機は今や(エアコンの使用制限や都市の緑化など)手軽な解決策で対処できる段階ではなくなりつつある。将来の政策決定者にできる限り信頼性の高い情報を提供するためには、ジオエンジニアリング技術の使用に伴うリスクと、使用を控えるリスクを比較検討しなければならない」と、コーネル大学シブリー機械・航空宇宙工学大学院の上級研究フェロー、ダグ・マクマーティンは言う。人工降雨と共に気候変動対策として期待されるソーラージオエンジニアリングでも同様だ。
深刻な穀物不足も
ヨウ化銀を使って人工的に雨を降らせる技術は、クラウドシーディング(雲のタネまき)と呼ばれるように、雲の中に雨粒のタネとなるヨウ化銀をばらまき、周囲の小さな水の粒を集めて大きな雨粒に成長させ、雨を降らせるというものだ。
ネバダ州の非営利の研究機関・砂漠研究所によると、ヨウ化銀は微量ながら環境中に自然に存在している。
ヨウ化銀の散布によりスキー場など特定の場所で降雪・降雨量が15%前後増えたとの報告もあるが、干ばつ対策としての効果は確認されていない。
この夏は中国に限らず、世界中の多くの地域が長引く干ばつに悲鳴を上げている。アメリカでは8月中旬段階で、全土のおよそ41.23%の地域が干ばつの影響を受けている。
観測史上最悪の熱波に見舞われた中国では、長江の一部が干上がり、当局が秋の収穫に「深刻な脅威」をもたらすと警告を発し、流域の自治体に節水を要請する事態となった。