「ジム通いもする」意外にもウケてしまったイスラム教聖職者の毎日とは?
“I Was Hated After 9/11"
理解に向けて アーメディの活動は高く評価(3月のビジョナリー・アーツ財団の授賞式で)
<9.11テロ後に学校で嫌がらせを受けた少年は、その後、若きイマームとなり、イスラム教徒の日常生活をYouTubeで発信している。寛容で平和な社会のために伝える意味について>
イスラム教徒への差別は私が生まれるずっと前から存在した。だが自分で初めて体験したのは2001年、アメリカで9・11同時多発テロが起きた直後のことだった。
私と友人たちはクラスメイトから「おまえらはウサマ・ビンラディンにそっくりだ。国に帰れ」と言われた。学校はイギリスのマンチェスターにあったが、生徒たちの間にも事件に対する怒りがあった。イスラム教徒全員に責任があると考える生徒もいた。
学校でガラスや石を投げ付けられるという事件も起きた。標的になったのは私を含め、パキスタン系、トルコ系、アフリカ系、アラブ系の8人だ。悲しい出来事だった。自分の信仰とは何ら関係のない事件のせいで、学校に自分の居場所がなくなったような気持ちにさせられたのだから。
こんな体験はありがたいことに一度きりだったが、今も世間ではこの手の出来事は珍しくない。世論調査機関ピュー・リサーチセンターによれば、アメリカのイスラム教徒で16年に何らかの差別を経験した人の割合は48%に達する。
反ファシズム団体「ホープ・ノット・ヘイト」の報告書によると、イスラム教は「イギリス人の暮らし」を脅かしていると考えているイギリス人は全体の3分の1を超えるという。19年のピュー・リサーチセンターの調査でも、アメリカにおいてイスラム教は最も評価の低い宗教だった。
それも無理はない。メディアで目にするイスラム教関連の話題は否定的なものが多い。爆破事件が起きて、その犯人が非白人となれば、報道ではイスラム教との関連がすぐに大きく取り沙汰される。
イスラムの教えは暴力やテロとは何の関係もない。だがテレビや新聞、ネットでは、あたかも関係があるような描写を何度も目にした。私はイスラム教についての真実を世間に伝えなければと思った。
人としてつながった実感
そこで私は「若きイマーム」というタイトルでYouTubeやSNSでの発信を始めた。私はイギリスで最も若手のイマーム(イスラム教導師)の1人だ。私の生活がいかに普通か見てもらえれば、世間の意識も変わるはずだと思った。
若い聖職者として、子を持つ父親として、コーヒー好きとして、スポーツジムに通っている人間として、人というレベルで皆とつながることができると思ったのだ。