最新記事

ウクライナ情勢

ロシア侵攻から半年 新学期を米大学で迎えるウクライナ人学生

2022年8月24日(水)10時22分
米ブラウン大学のキャンパスで読書するウクライナからの留学生

米国の大学から送られてくる合否通知の開封の場面を自撮りして、動画をネットで公開したい──。写真は16日、米ロードアイランド州プロビデンスのブラウン大で読書するウクライナからの留学生(2022年 ロイター/Brian Snyder)

米国の大学から送られてくる合否通知の開封の場面を自撮りして、動画をネットで公開したい──。フリブ・ブルツェフさん(18)は、そう考えていた。朗報だったら、家族と抱き合って歓声を上げることを想像しながら。

だがその通知が届く時期、ブルツェフさんはウクライナの首都キーウで、窓のない部屋か防空壕で息を潜めていることが多かった。空襲警報のサイレンと暗闇のせいで、自撮り動画アップの計画は台無しになった。

ロシアによるウクライナ侵攻開始から約1カ月後の3月31日、米アイビーリーグの名門校ブラウン大学から合格通知が届いた。同大は、ウクライナでの戦禍を理由に、ブルツェフさんのために夏期講習への参加資格や食費、航空旅費、そして住居費を負担すると申し出た。

「はるか離れた地にある大学から、こうした支援を受けられるとは思ってもいなかった」とブルツェフさんは言う。「初めて出会う人々、新しい機会、すべてが刺激的だ」

米国の大学が「安全な避難先」に

米国際教育研究所(IIE)が559校を対象に行った調査では、120校以上の大学がウクライナ人学生への支援の取り組みを行っていると回答した。だが、実際の数はそれよりはるかに多いと見られる。

支援内容は、出願期間の延長や出願に必要な公的書類の一部免除、ウクライナ人学生向けの入学枠の拡大、そして経済的な援助などだ。紛争が6カ月目に入った現在、こうして入学を認められた学生たちが、秋学期を迎える大学のキャンパスに到着しはじめている。

シカゴ大学は、ウクライナ人学生の授業料補助など2000万ドル(約27億ドル)規模の支援を開始した。テキサスA&M大学は授業料、入学金、生活費を補助対象としている。バージニア州のハンプトン大学はこの夏、戦禍の影響を受けた学生最大100人を無料でキャンパスに招いた。

IIEのジェイソン・チェズ共同総裁は、世界の学生にとって米国の高等教育機関が「安全な避難先」になっていると語る。

ウクライナ人学生たちは多くの障害を克服しなければならなかった。在キーウ米国大使館は現時点では就学ビザの発行を行っておらず、キーウ以外にある領事館まで足を運ばざるを得ない。また男性がウクライナを離れることは難しく、召集を免れるためには学生であることを証明しなければならない。

オレクサンドル・シンハイフスキーさん(18)は、今秋ジョージタウン大学に入学する予定だが、4回目の挑戦でようやくウクライナからモルドバに出国できた。就学ビザ取得のためにルーマニアに行き、ジョージタウン大学の支援により2週間ホテルで過ごした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-米、関税収入1日20億ドル 日・韓が訪米し貿

ビジネス

NY外為市場=ユーロ上昇、独連立合意報道で オフシ

ワールド

マスク氏とナバロ氏、関税巡り批判合戦 ホワイトハウ

ビジネス

米国株式市場=S&P、約1年ぶり5000割れ トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及んでる...インド人男性の投稿にSNSで怒り爆発
  • 4
    【クイズ】ペットとして、日本で1番人気の「犬種」は…
  • 5
    これが中国の「スパイ船」...オーストラリア沖に出現…
  • 6
    反トランプのうねり、どこまで大きくなればアメリカ…
  • 7
    流石にこれは「非常識」?...夜間フライト中に乗客が…
  • 8
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    「茶色すぎて前が見えない」...ネパールを染める「危…
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク…
  • 6
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 7
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 8
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 9
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 10
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中