ニコラス・ケイジ、トリュフを探し当てる愛しのブタを救い出す旅へ
Some Pig!
誰だって失敗はしたくない。だから人通りの少ない道に足を踏み入れるのは危険だと思い、別の道を探したくなる。そういう選択に直面したときの人は弱いものだ。
この映画は味覚や嗅覚による記憶という不思議な領域にも踏み込んでいる。トリュフの微妙な香りが人々の記憶や感情を呼び起こし、それぞれの過去をよみがえらせる。ここまでくると、もう復讐映画を超えている。素敵なサプライズもあるが、詳しくは書けない。こういう映画は先入観なしで見てほしい。
ニコラス・ケイジという役者は、いつも100%以上の仕事をする。声優を務めた『スパイダーマン:スパイダーバース』のようなアメコミ系の作品にも全力でぶつかる。
そして、あの眉間のしわ。あれは戦う意欲よりも思慮深さを、そして傷つきやすさを感じさせる。やられてもやり返さず、心の傷を奥に抱え込む表情。タフガイのイメージには合わないが、それが『ピッグ』では生きている。
『ピッグ』は救いであり、呪いでもある。続編やスピンオフを想定していないのは救いであり、あまりに簡潔なのは惜しい気もする。でも満腹よりは腹八分目。少し食い足りないくらいがベストだ。
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