米中「離婚」はやっぱり無理? 戦略なき対中強硬路線が自滅を招く
NOT DIVORCED JUST YET
ブリンケンは昨年3月、中国の王毅外相らと初めて対面で会談した FREDERIC J. BROWN-POOL-REUTERS
<2大経済大国の関係は依然として根強く、デカップリングは進んでいない。ビジネス界は大規模な対中投資を続け、米企業は中国にとどまる手段を探っている>
アメリカ大統領としては対照的な人物であるドナルド・トランプとジョー・バイデンに共通点があるとすれば、それは中国の戦略的脅威をめぐる警告だ。どちらも2大経済大国である米中の部分的な「デカップリング」の道を探り、中国に対する依存を減らそうとしてきた。
一方で、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は「中国製造2025」政策を掲げて米企業の排除を目指している。
確かに、テクノロジー部門やソーシャルメディアでは、厳格な検閲を行う中国との大幅な分離が進む。だが物品・サービス貿易全般で、米中のデカップリングは今も目に見える形で起きていない。米中貿易戦争をトランプが開始し、バイデンもある程度支持しているにもかかわらず、デカップリングの見込みは薄い。
アメリカにとって中国が最大の得意先市場である農産物でも、各種の原料や製造部品でも、米中の経済関係は根強いままだ。多くの部門では、さらに深度が増している。
米農務省は5月下旬に発表した報告で、今年度の農産品輸出額は中国に限っても過去最高の360億ドルに達すると予測。2年前の対中輸出額(170億ドル)の2倍以上だ。
米ビジネス界は大規模な対中投資を続け、今後も継続する意向をより強く打ち出すようになっている。2国間の貿易促進に取り組む非営利団体、米中ビジネス評議会のエバン・グリーンバーグ元会長は6月に米戦略国際問題研究所で行った講演で、デカップリングは「経済的に不可能」で、米企業は中国市場進出を加速すべきだと語った。「中国がアメリカ製テクノロジーにあまり依存しなくなれば、中国の長期的利益に対するアメリカの影響力が低下する」
在上海米国商工会議所が昨年行った調査では、中国に進出している米企業338社の約6割が、前年より投資が増加したと回答している。
中国からの安価な製品の輸入急増で、アメリカではこの約20年間に、製造業を中心に雇用者が数百万人規模で減少した可能性がある。そのせいもあって反中ポピュリズムが台頭したが、多くのエコノミストいわく、米中の経済を完全に切り離す「ハード・デカップリング」は両国に破壊的打撃を与えかねない。
もっとも、企業にとって米中貿易継続の本音は収益だ。「大儲けができるのに切り離しを望むわけがない」と、米中ビジネス評議会のダグ・バリー広報統括責任者は言う。