米中「離婚」はやっぱり無理? 戦略なき対中強硬路線が自滅を招く
NOT DIVORCED JUST YET
インフレ圧力を受けて、バイデン政権は中国をめぐる発言をいくらかトーンダウンさせ、トランプが導入した対中制裁関税の一部撤廃を検討し始めている。
「中国政府は非対称なデカップリングを追い求め、世界に対する中国の依存を減らす一方で、世界の中国依存を高めようとしている。だが米経済、あるいはグローバル経済から中国経済を切り離すことは望んでいない」。アントニー・ブリンケン米国務長官は5月下旬、ジョージ・ワシントン大学での演説でそう語った。
習の強硬策の下で経済成長が大きく減速するなか、中国側にも路線転換の兆候がいくつか見える。監査をめぐる中国当局の規制のせいで、アリババなどの中国企業はアメリカでの上場廃止のリスクにさらされていたが、そうした規制の一部が緩和されたとの報道がある。
それでも、より広い意味でのデカップリングがある程度進行していることも、貿易データに表れ始めている。新型コロナのパンデミックの収束傾向で、安価な消費者製品の需要が激増するにもかかわらず、昨年のアメリカの対中物品貿易は2018年のピーク時を下回ったままだった。
「パンデミック直後の耐久消費財などの爆発的需要を考えると、関税や制限措置がなければ、米中間の物品貿易は昨年、間違いなく過去最高に達していたはずだ」。WTO(世界貿易機関)の元紛争処理担当者、ニコラス・ランプはそう話す。
専門家の間には、さらに大幅なデカップリングがゆっくりと自然発生的に起きるという声もある。人権への懸念が消費者の決断に影響を与え始めている状況では、特にそうだ。
衛星での失敗を半導体でも
中国をはじめとする低賃金国への生産移転を取引メーカーに強いた世界最大の小売企業ウォルマートも、強制労働や人権侵害を理由に新疆ウイグル自治区からの輸入を禁じる法案がアメリカで成立したことを受けて、同自治区産品の排除に乗り出したとされる。同社の動きは、中国国内で大きな反発を巻き起こした。
それでも、米企業は中国にとどまる手段を探っている。米メディアが昨年12月に報じたところでは、フェイスブックは「中国企業の広告で巨額を稼ぎ続けて」おり、アップルの同年7~9月期純売上高の4割は中国が占めていたという。
行きすぎたデカップリングはアメリカにとって脅威になる。「アメリカの安寧と影響力の土台である技術基盤は、世界規模の技術ネットワークにおいて中国と徹底的に絡み合っている」と、カーネギー国際平和財団のジョン・ベイトマン上級研究員は最近の研究で指摘する。