最新記事

中国経済

「世界の工場」がコケたら、みんな道づれ──中国に果たしてもらう役割とは

CHINA SHOCK?

2022年7月20日(水)14時32分
クラーク・パッカード(ケイトー研究所研究員)
中国

XIANG XINRONGーVCG/GETTY IMAGES

<ゼロコロナ政策の影響で、15日発表の中国実質成長率は0.4%と、大失速の中国。しかし、世界が中国経済に依存している今、その崩壊を喜ぶのは自分の首を絞めるも同然>

もう間違いない。今の中国経済には強い逆風が吹いている。その原因は、ほぼ中国政府にある。強引なゼロコロナ政策で、経済活動を広い範囲で止めてしまった。

毛沢東主義への回帰を急ぐ習近平(シー・チンピン)政権が民間企業への締め付けを強めたので、景気の牽引役だった情報技術部門が麻痺してしまった。放置していた不動産バブルがはじけて経営破綻が相次ぎ、市場の混乱も招いた。

そこへロシアのウクライナ侵攻が起こり、輸入に頼る食料やエネルギーの価格が一気に高騰した。だからIMFは4月に、今年の中国経済の成長率予測を4.4%に下方修正した。2%程度という見方もあり、そうなればほぼ半世紀ぶりでアメリカの成長率を下回る可能性がある。

しかも、そこに長期の逆風が加わる。生産性の伸びの鈍化や人口減少、ハイテク部門の頭脳流出などだ。こうなると、中国経済は無敵どころではない。西側諸国の一部から歓喜の声が上がるのも無理からぬところだ。しかし、中国経済の崩壊を期待するのは間違いだ。

第1に中国が景気後退に陥った場合、その打撃を受けるのは中国共産党ではなく、党とは何の関係もない13億超の一般国民だ。1978年の改革開放以来、中国では8億人以上が貧困から脱出できた。もしも経済が崩壊すれば、この素晴らしい成果が無に帰してしまう。

またアメリカと中国の経済は今や相互依存の関係にあるから、アメリカ人の暮らしも脅かされる。前政権以来の貿易戦争で高率関税を課しても、アメリカ人は猛烈なペースで中国製品を消費している。

ゼロコロナ政策により中国の製造業が失速して供給が減れば、アメリカの物価はさらに上昇する。成長なきインフレの不気味な予感が現実になりかねない。

中国はアメリカ製品の輸出先としても、カナダとメキシコに次ぐ第3位の重要な存在だ。中国経済の失速でアメリカ製品(自動車や電化製品、医療機器や燃料など)への需要が減れば、中国への輸出で稼いできた米企業や労働者に打撃となる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中