ジョンソン英首相は「なぜ今」辞任するのか
Britain Finally Turned on Johnson
首相官邸前で辞任を表明するジョンソン英首相(7月7日) HENRY NICHOLLSーREUTERS
<「イギリス人にも説明できない」「イギリス人は偽善が大嫌い」......数々のスキャンダルを乗り越えてきたジョンソンが、突如、追い詰められたのはなぜか。外国人には分かりにくいイギリス人の複雑な感情とは>
ボリス・ジョンソン英首相にとって、先週はとても、とても、悪い1週間だった。
党首を務める保守党の不信任投票を6月に乗り切り、首相の座に居座ろうと思っていた矢先に、辞任を表明する事態に追い込まれたのだ。
そもそも保守党で不信任投票にかけられるきっかけになったのは、いわゆる「パーティーゲート」で新たな事実が次々と発覚してきたからだ。
コロナ禍で国民に厳しい外出規制を強いていた時期に、首相官邸でパーティーが開かれていたこと、そこにジョンソンも出席していたこと、それについて嘘をついていたことが、少しずつ明るみに出た。
それでも不信任投票を乗り切ったのに、今度は別の不祥事が浮上した。ジョンソンが保守党幹部に起用した人物が最近、酒に酔って男性に痴漢行為を働いたことが発覚し、辞任に追い込まれたのだ。
さらにその後、ジョンソンがこの人物の問題行動について、事前に報告を受けていたことが明らかに。それについてジョンソンは「忘れていた」と釈明し、ますます集中砲火を浴びることになった。
こうして7月7日、ついにジョンソンは辞任を表明した。
一方で、アメリカをはじめ外国から見ると、「なぜ今なのか」という疑問も否めない。なにしろジョンソンは、これまでもっと重大に見えるスキャンダルを乗り越えてきた。
ブレグジット(イギリスのEU離脱)を推進するために、「EUから離脱すれば国民保健サービス(NHS)の収入が週3億5000万ポンド増える」と嘘をついたときしかり。
ブレグジットをめぐる混乱で、議会を5週間にわたり閉会するよう女王に直接提案して、英最高裁に違法と判断されたときしかり。
首相官邸を改修するため、保守党の大口献金者に約20万ポンドの寄付を求めたときしかり。
それでもジョンソンは首相の座を守ってきた。
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今回は何が違うのか。
政治ニュースサイト「ポリティコ・ヨーロッパ」のイギリス担当記者エスター・ウェバーに、米スレート誌のアイマン・イスマイルが話を聞いた。
――なぜジョンソンは今、辞任することになったのか。
突然の出来事のように感じられるのは無理もない。ただ、イギリスでは、じわじわと進んでいたものが、一気に加速したという感覚が強い。
この半年間、ジョンソンの指導力にはずっと疑問符が付けられていた。その最大の原因はパーティーゲートだろう。
国民の多くがこの事件には非常に憤慨していて、保守党内でも、このままジョンソンを首相にしていていいのかという疑問が浮上した。