最新記事

日本社会

コロナ困窮者に追い打ちの物価高 「分配」訴える参院選に届かぬ声

2022年7月6日(水)11時13分

みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介・上席主任エコノミストは、「食料含め生活必需品の価格が軒並み上がっている。所得の低い人たちは消費全体に占める生活必需品への支出の割合が高所得者に比べて高くなるため、打撃による負担感が大きい」と指摘する。同社試算によると、年収300万円未満の世帯では、燃料油価格の激変緩和措置が続いたとしても5万円程度の負担増となる。同措置がない場合の負担増は6万円超。3%程度の消費増税に相当するという。

寄付やボランティアをする中間層まで厳しい事態に

NPO自立生活サポートセンター「もやい」が毎週土曜日に都庁前で実施する食料配布に並ぶ人の数は、今年に入り1日で過去最多の550人を超えた。その後も500人前後が列を作る。大西連理事長は「本来は自立しているとみなされるような人達が、今は常に低所得状態にある」と語る。「今後は中間層も生活が苦しくなる。負担が増えるので寄付をするとかボランティア活動をするという気持ちの余裕がなくなってくるかもしれない」と危惧する。

46歳のがくさん(本人の申し出により名字は掲載せず)は、コロナ前までフリーカメラマンとして学校の修学旅行などに同行して写真を撮っていた。しかし、コロナ禍の影響で学校行事がなくなり、最後に撮影の仕事をしたのは2020年の3月から4月ごろ。貯金を生活費に当てていたが、それも底をついてきた。

東京の気温が今年初めて35度を超えた6月25日、がくさんは豊島区の東池袋中央公園へ出向き食料配布の列に並んだ。昨年の冬以来2回目だ。食事は仕事がないため昼ごろ起きて1食目、夜に2食目。「近くの業務用スーパーで買い物をしているが、100円だったパスタが最近130円から140円くらいに値上がりした」と話す。電気代も月3000円から4000円程度に上がったが、「暑くなってきたのでクーラーをつけないわけにはいかない」と語る。

この公園で食料配布や相談会を主催する 「TENOHASI」の清野賢司代表理事は、若者が増えたほか、中高年で新たに並ぶようになった人が目につくと感じている。「収入減と物価高の状況の出口が果たしてあるのか、不安に思っている人たちが多くいると思う」と、清野さんは言う。「(参院選の候補者には)まずは、こういうところに来て考えて欲しい」

(金子かおり 編集:久保信博)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中