コロナ困窮者に追い打ちの物価高 「分配」訴える参院選に届かぬ声
みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介・上席主任エコノミストは、「食料含め生活必需品の価格が軒並み上がっている。所得の低い人たちは消費全体に占める生活必需品への支出の割合が高所得者に比べて高くなるため、打撃による負担感が大きい」と指摘する。同社試算によると、年収300万円未満の世帯では、燃料油価格の激変緩和措置が続いたとしても5万円程度の負担増となる。同措置がない場合の負担増は6万円超。3%程度の消費増税に相当するという。
寄付やボランティアをする中間層まで厳しい事態に
NPO自立生活サポートセンター「もやい」が毎週土曜日に都庁前で実施する食料配布に並ぶ人の数は、今年に入り1日で過去最多の550人を超えた。その後も500人前後が列を作る。大西連理事長は「本来は自立しているとみなされるような人達が、今は常に低所得状態にある」と語る。「今後は中間層も生活が苦しくなる。負担が増えるので寄付をするとかボランティア活動をするという気持ちの余裕がなくなってくるかもしれない」と危惧する。
46歳のがくさん(本人の申し出により名字は掲載せず)は、コロナ前までフリーカメラマンとして学校の修学旅行などに同行して写真を撮っていた。しかし、コロナ禍の影響で学校行事がなくなり、最後に撮影の仕事をしたのは2020年の3月から4月ごろ。貯金を生活費に当てていたが、それも底をついてきた。
東京の気温が今年初めて35度を超えた6月25日、がくさんは豊島区の東池袋中央公園へ出向き食料配布の列に並んだ。昨年の冬以来2回目だ。食事は仕事がないため昼ごろ起きて1食目、夜に2食目。「近くの業務用スーパーで買い物をしているが、100円だったパスタが最近130円から140円くらいに値上がりした」と話す。電気代も月3000円から4000円程度に上がったが、「暑くなってきたのでクーラーをつけないわけにはいかない」と語る。
この公園で食料配布や相談会を主催する 「TENOHASI」の清野賢司代表理事は、若者が増えたほか、中高年で新たに並ぶようになった人が目につくと感じている。「収入減と物価高の状況の出口が果たしてあるのか、不安に思っている人たちが多くいると思う」と、清野さんは言う。「(参院選の候補者には)まずは、こういうところに来て考えて欲しい」
(金子かおり 編集:久保信博)